いっしょ
ある日、こわいゆめを見た。お母さんが、
「いらん子やから、あんたのことすてるわ。」
って、ぼくをダンボールに入れちゃうゆめ。どうしよう、ってなきそうになっていると、目がさめた。くらいけど、お母さんがぼくの頭をぽんぽんとしてくれる顔が、やさしいのが見える。だから、聞いてみた。
「ねえ、お母さん。お母さんは、どうしてぼくのお母さんになったの?」
どうしよう、『いらん子は、すてるわ』って言われたら。
「さいしょは、ゆうたが、おかあさんといっしょがいいって言ってくれたから。今は、ゆうたといっしょにいると、しあわせなきもちになるから。」
お母さんは、やっぱりいつものお母さんや。よかった。ぼくも、お母さんといっしょだと、しあわせ。ふふ。
でも。ふと、赤ちゃんのことを思い出す。赤ちゃんは、お母さんにすてられたから、いっしょでしあわせな人がいない。
「ねえ、お母さん。赤ちゃんもいっしょやったら、あかんかな?」
赤ちゃんもいっしょなら、もっとしあわせかもしれへん。
でも、おかあさんは、“にっこり”わらって言う。
「お母さんはゆうたのことでいっしょうけんめいやから、赤ちゃんをそだてるのは、むずかしいかな。」
いつものお母さんやけど、何かかくしてはる。やっぱり、さびしい。
学校に行くと、今年も同じクラスになったたかしくんが、後ろから、ぼくの頭をぽんとたたいていく。
「何か、さいきんのゆうた、へん。」
へんなんは、ぼくじゃなくて、お母さんなんや。
「話しかけても、あんまりわらわへんしさ。」
わらわへんのも、ぼくじゃなくて、お母さんなんや。
その日、家に帰ると、
「あれ?カギ、あいてる…。」
何でやろう、どろぼうさん?
どきどきしながらそっとドアをあけるとお母さんがしゃがんでいる後ろすがたが見えた。お母さんが早く帰ってきている?何で?
じっと見ていると、お母さんの前に、木のぼうがたてよこにくみあわさった何かがあるのに、気づいた。
「ゆうた、おかえりー。…え、何でドアからカセイフワミタしてるん。」
“にっこり”じゃない、いつものお母さん。目を細くして、わらっている。
「お母さん、それ、なに?」
そうっと、木のぼうを指さして、聞いてみる。
「これはねえ、赤ちゃんのベッド。」
「赤ちゃんのベッド?」
お母さんは、さらに目を細くして、言った。
「そ。赤ちゃんもいっしょがええことに、ようやく気がついてさ。」
われながら、気づくのおそいって、なあ。と、くすくすわらっている。
赤ちゃんがいっしょになるようだ。そして、お母さんはうれしそう。
「みんないっしょが、やっぱりええよね。」
ぼくは、お母さんがわらっていたら、何でもええよ。




