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幕間②

 ついさっきまで話していたのに、いつのまにか彼は眠ってしまっていた。

 こうして眠っている顔を見るとまだまだ少年の顔だ。起きているときが特別大人に見えるということもないのだが、眠っていると殊更幼く見える。

 年齢を聞いたわけではないので正確には分からないが、私とそれほど年齢は変わらないように見えるので一五,六くらいだろうか。————こんな無防備な寝顔を見てしまうと、罪悪感で胸が苦しくなる。

 私はこの子に、なんて残酷でひどいことをしているのだろう。自分の都合で外へ連れ出して、危険な旅にまで付き合わせている。————この旅の先にどんな結果が待っているか知っているのに……。

 それでも、私は行くしかないんだ。時間はもうほとんど残っていない。彼を逃したら、いつまた私のことが見える人に会えるかわからない。それが言い訳なのもわかっている。けど、私は彼に賭けるしかない。

 嘆く半面、彼でよかったとも思う。

 普通の人なら、こんな幽霊なんかの話を聞いてくれることなんてなかったと思う。理由は分からないけど、彼はまっすぐこちらを見て、私の話を聞いてくれる。それだけで私はすごく救われている。

「ねぇ、なんで私なんかと一緒に来てくれたの?」

 ぽつりと眠っている彼に問いかけた。もちろん、そんな問いかけをしても彼は瞼を閉じたままだ。話しかけても起きる気配は全くない。本当に疲れていたのだろう。

 無防備なその寝顔はあまりに愛おしくって、顔を撫でようと手を伸ばす。だが、伸ばした手は彼の顔に触れることはなく、無情にもすり抜けていってしまう。

「ほんと……、なんでなんだろうね」

 私には、あなたがなぜ一緒に来てくれるのかわからない。だけど、君がとてもやさしい人なのはわかる。

 君があの時、私を見つけてくれなければ私は世界のどこかでずっと独りぼっちだった。君が手を差し伸べてくれなかったら私は人知れず孤独に押しつぶされてしまっていただろう。

 彼には感謝しかない。感謝しかない、……はず。だから、この胸の奥に宿る温かい気持ちも彼への感謝だ。

 そう自分に言い聞かせると、眠っている彼を起こさないようにこっそり部屋を出た。


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