故郷への帰還
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何ヶ月ぶりだろうか。
俺はずっと物心ついてからずっと生きてきたダンジョンに戻ってきた。
ひどく懐かしい。
湿度がやけに高い空気。遠くから聞こえてくる魔獣の吠え声。独特の魔力の流れ。肌のぴりつき。
すべてが懐かしく、自然と気持ちが引き締まってくる。わずかな油断が死に直結する懐かしき我が故郷。
笑みを浮かべながら周囲を見ていると、ミガールが俺の方を見て、
「なんだ、その顔」
「郷愁を堪能しているのだ」
はぁ? わけわからんとミガールが顔をしかめた。
俺は納得した。
確かに真の戦士を目指す者として、郷愁などを感じるのはふがいないと思われても仕方がないかもしれない。
改めて真の戦士らしく警戒を強めよう。
今いるのは第三層。ダンジョンの中に同行したのは俺とカエラとミガールと、金獅子騎士団の三名ーーケオロンとマーセルとウルガだった。メレーは一緒に来たがったが、危険なのでライザの保護の役目を与えて地上に残した。また階級的にケオロンに次いで高いブエロは詰め所内に囚われているというマルキアの確保に向かわせた。拷問等が行われていたら直ちに辞めさせるために必要だと、ひどく親切になったケオロンに言われた。
魔獣はほとんどいなかった。金獅子騎士団の大部隊が先を進んでいるのだから、そちらに引き寄せられているのだろう。お陰で潜行はひどく捗っている。
六名で歩いていると、
「う゛」
と先頭を歩いていたマーセルが鼻を押さえた。
確かに俺に鼻にも今まで以上に強い血臭が届いていた。
進んできたダンジョン内は死体がいくつも転がっていて、丁寧に並べられた人間のものと雑に放置された魔獣のものがあちこちに残されていて、それを道しるべに俺たちは山荘にまで降りてきたのだが、一部は食われたあともあったその現場でもここまで強い血臭はなかった。
つまり近くで大規模な戦闘が行われたことを意味した。
俺たちは慎重に進んだが、血臭の理由はすぐにわかった。
やや大きな回廊状の空間に百近い魔獣の死体と、そして騎士を中心にした数十人の人間の死体が転がっていた。今までのように人間の死体は並べられておらず、死体は死んだ姿のまま放置されていた。非戦闘員の死体もあった。戦場直後の混乱がそのまま残されていた。
一方、破壊の中心には巨大な空白があった。巨大な生き物が横たわっていたような赤黒い血の池が残された空白地。その傍らには下半身が欠損した見覚えのある騎士ーー確かファルサと言っただろうか、彼の死体もあった。まだ戦っているつもりなのか、目は見開いていて両手は剣を握ったままで、その剣は血と肉片にまみれたまま半ばから折れていた。
「なんだこのおびただしい血は……」
地面を見てミガールが言った。
俺は暗い目で周囲の壁に刻まれた傷や魔法のあとを確認し、それから床に染みこみ切れずに赤黒い池となっている空白地を再度見た。
「あー、面倒なことになったな」
「どういうことですかね?」
ケオロンが恐る恐る、といった感じで聞いてきた。
「ここで死んでいたのはおそらく竜だ」
「竜!?」
全員がその大きさを確認するように血だまりを見た後、一斉に振り返って俺を見た。
「そ、そうか、ダンジョンの中には確かに竜がいる。最強の敵だな」
「最強ではないぞ」
「いや、でも竜だとしても死体が……」
「うむ。つまり竜は死んで、その後復活したのだ」
「……」
「屍竜はずいぶんと面倒な相手だぞ」
皆驚いた顔をしている。
そんなことでは真の戦士にはいつまでたってもたどり着けない、と俺は思った。
同時に屍竜は厄介な相手だ。
「急ぐぞ」
俺は先頭に立って走りだした。
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