潜入
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あとで聞いた話である。
封印のダンジョンはアルカサールの内城の中にある。政庁からは少し離れたうらぶれた場所で、見た目は敢えて崩落しかかっている古い聖堂のように作られ、加えて周囲には立ち入り禁止の鎖が巡らされていた。
目立たぬように、人が近寄らないように作られた禁足地だった。
加えて今はその前には三名の兵士達が立哨していた。
油断なく周囲を見回している。
一方で、地面には新しい鉄靴跡が多数残っていた。ほとんどは聖堂に向かう鉄靴跡だった。
それを遠目で見ながら、双剣騎士団所属の魔術師マイアは物陰で息を殺していた。
なぜここで、こんな風に息を殺しているのかは正直わからなかった。
半日前、金獅子騎士団との間に発生した命がけの戦闘の中、魔術師ギルド時代の後輩・マルコールと思いがけなく再会した。その結果、戦いはなし崩しに終わり、
「あとで話をしましょう」
というマルコールの提案に対して、
「でも私たち、アルカサールに入れなかったの」
とマイアが返すと、
「あー。大丈夫ですよ。ちょっと待っててください」
マルコールは入市を待つ商人達のところに向かってしばらく話をして帰ってきた。
「簡単に契約できましたよ。彼らの荷物に紛れて入ってきてください」
「え?」
「大銀貨五枚ですけど、それくらい、出せますよね? 無理そうなら僕がーー」
「あ、大丈夫。それくらいなら、私だってちゃんと働いてるし」
「ならよかったです。僕は金獅子騎士団の人と話があるので後ほど!」
取り残されたマイアたちは死者を収容する必要もありいったん双剣騎士団本部と連絡を取った。話し合いの結果、マルコールの提案通り商人の荷物に紛れてアルカサールに入ることになった。しかもアルカサールへの潜入部隊は再編成され、団長であるヒルダも加わったのだった。
今、ヒルダはマイアのすぐ横で鋭い目で封印のダンジョンの入口を見ている。
その視線はマイアがこれまで見たことないほど真剣で、どこか熱っぽささえあり、ヒルダが魔王について真剣に考えていることが伝わって来た。
「どうしますか?」
ギルバスの質問に対して、ヒルダは立ち上がった。
「待っていても仕方がないでしょう。行きます」
ヒルダはダンジョンの入口に近づいていった。
ヒルダに気づいた兵士が一瞬唖然としたあと慌てて武器を構えようとした。だがその武器がヒルダに完全に向く前に、瞬足で近づいたヒルダの手刀によって三人の意識は一瞬で刈り取られた。
「行きましょう」
ヒルダは皆を待たずにダンジョンに迷い泣く足を踏み入れる。
慌てて双剣騎士団の団員たちも後を追った。
マイアも拒否する気持ちを押し殺して、半泣きの表情で続いた。
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