混乱
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あとで聞いた話である。
アルカサールは異常な状態になっていた。
金獅子騎士団が、団員を襲った犯人捜査のために都市を閉鎖する動きをはじめたことに加え、大規模に「戦闘員」の募集を開始したのだ。戦闘員は騎士の命令のもと弓など遠距離攻撃と輜重を担当することになると言う。うまく行けば名誉と金銭が手に入るため、力自慢の若者達の間ではちょっとした話題になっていた。
その状況が不満なのかイライラと部屋の中を歩き回るベルケスに向かってベルケスの娘であるライザは、
「ちょっと出てくるね」
とだけ告げて、止められる前に宿を飛び出した。
歩き出してすぐにライザにも見慣れたはずのアルカサールの町並みがおかしく感じられた。理由はすぐにわかった。日は高く雨も降ってなくて明るいのに歩いている人がひどく少なかったのだ。普段は昼間はたくさんの人が歩いてるし、買い出しでよく市場に行っているライザはすぐに知り合いに会うことになるのだが、今日はそんな気配はなかった。
どこか異界に紛れ込んだ様な町並みをライザは不安を覚えながら足早に、アーシュがいるはずのピサール親方の新しい鍛冶場に向かって急いだ。
「アーシュはアリュール商会の人に言われて王都に向かったらしいぜ?」
ピサール親方は申し訳なさそうな顔でそう言った。
ライザは少しだけ眉をひそめ、それからすぐにお礼を言って鍛冶場を出た。
アーシュはどのように王都に向かっただろうか考える。一度アリュール商会に寄ったとしたら、北門で追いつけるかもしれない。
ライザは走り出した。
相変わらず歩いている人はほとんどいなかったが、代わりに金獅子騎士団の騎士が二人組で巡回している姿を頻繁に見た。なにをやったのか複数の潜行者と思われる人間が手を数珠つなぎに縛られた状態で金獅子騎士団の騎士に連行されていた。明らかに怪我をしていて、抵抗したらしい様子が見えた。
ライザは焦りを感じた。そうでなくてもアーシュは金獅子騎士団ともめ事を起こしたと聞いている。
自分自身の恐怖よりもなによりもアーシュが心配だった。
北門まで三大ガルデ(キロ)の道のりをライザは走り続けた。
一対の哨戒塔に挟まれた無骨な北門が見えてきて、ライザの足は自然と止まった。
北門の方から争いの声が聞こえてきたからだった。
アーシュのことが心配になってキュッと胸が痛んだ。
立ち尽くしていられないことはわかっていた。勇を鼓して一歩踏み出した。
そのままゆっくりと北門に近づき、開いたままの北門の先に見える光景に少しだけホッとした。
争いの中にアーシュの姿はないことはいつもアーシュのことを気に掛けているライザにはすぐわかったからだった。
隠れるようにしてさらに近づいた。
争っているのは、騎士らしい姿をした二組の集団でライザは何が起こっているのかわからず首をかしげた。
訳が分からないままとにかく胸の中でアーシュに何事もないことを祈った。
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