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再会


     @


 話を終え、ラウダからアイビーに手を出さない旨、ゴネンの保証つきで確約してもらい、念のため俺自身も定期的に見回ろうと決め、それから俺はミダ一家を出た。


 ゴネンはわざわざ見送りに外まで来てくれた。


「では、俺は行く。約束のことは頼んだぞ」

「そ、そうか。残念だが、いつでも来てくれ。というか俺はもうお前は一家の一員だと思っているからな」

「それは断る。俺には父上がいる」

「そいつはわかってるよ。何度も聞いた。だが一家ってのは家族だけのことを指すんじゃねぇんだ」

「戦友を意味するということは認識している。だが戦友になるのも得るのも、まずは俺が真の戦士になってからだ」

「もう充分強いと思うがなぁ」

「まったくもって足りてない。父上は俺の十倍は強い」


 ゴネンは俺がもぎ取った鋼鉄の門扉を見て、


「でもこれもアーシュくんがやったんだろ?」

「む……閉まっていたものでな。迷惑をかけた」


 俺は鉄製の扉を持ち上げて、曲がっているところを逆にねじ曲げて可能な限り平らに直して、壁に立てかけた。


 その様子をビックリした顔で見ていたゴネンが、俺が離れた後、俺が直した箇所を叩いたり自分で曲げようとしたりして、結局出来ないまま、呆れた顔で立ち上がった。


「なんでそんなに力がある?」

「鍛錬だ。鍛錬あるのみ、だ」

「いや、鍛錬でどうこうできる範囲じゃないだろ」


 そこに、遠くから、声が掛かった。


「おおーい」

「あん?」


 ゴネンが厳しい顔を作って声の主に向けた。どうもこの顔が「迫力がある」と本人は思っているようだった。俺には向けないが、部下にはしばしばこの顔を向けた。そんなことは意味がないということを伝えた方がいいのだろうか。真の戦士は相手の表情に畏れなど感じない。


 走ってきたのは、俺がミダ一家に入ろうとしたときに声を掛けてきた初老の男だった。


 ゴネンが首をかしげた。


「エビの旦那じゃねぇか。どうした?」


 エビと呼ばれた初老の男は、荒い息を必死に整えながら驚いた顔で俺を見た。


「お、お前、大丈夫だったのか?」

「……もしかして心配を掛けたのか」

「ああ、うん。いや、まぁ、そうだ。なんともないようだな? なんだ? もしかしてゴネンと知り合いだったのか?」

「先ほど知り合ったばかりだ」

「おうよ。俺はすっかりアーシュくんを気に入ってなぁ。まぁ、もう身内みたいなもんだ」

「だから違うと言っている」

「馬鹿野郎。そっちはともかく俺が身内と思うのは勝手だろうが!」

「確かにそれはそうか」

「わけがわからん……なんで殴り込んでなんともなってないんだ? ……ま、まぁ、とにかく無駄なことしてしまったようだな。あー、久しぶりに全速で走った。くそっ。ベルケスにも謝らないと」


 ゴネンが顔をしかめた。


「ベルケスって、A級の『悔恨の暁』のか?」

「ああ。手が空いていて、ミダ一家とやり合える実力者で俺の知り合いっていやぁ、どうしたってA級の潜行者(ダイバー)になる」

「マジか。しかもうちとやり合う気だったのかよ!? エビの旦那だって元B級だろうが。だがそもそも俺たちはエビの旦那に何度も仕事を頼んでるだろ? 言わば業務の発注者だ。その業務の発注者とやり合うためによりによってA級の潜行者を呼んでくるってのは筋が違うんじゃねぇのかい?」

「俺だって悩んだんだよ! だが未来ある若者のためだって思って」

「やだやだ義理を知らない元潜行者って最悪だろ」

「申し訳なく思ってるって言ってるだろ!」

「ベルケスの旦那には、旦那の方から言ってくれよ? 俺たちは元とはいえA級の潜行者なんかと絶対に揉めたくねぇ」

「ベルケスはいい奴だよ。話せばわかってくれる」

「いい奴だから困るんだよ。こっちは地回りだぜ? 悪い奴なんだよ」


 ゴネンとエビが良く分からない争いをしているともう一人男が剣を片手に普通の服で現れた。


 三人の中で一番、迫力がある男だった。しかも俺の見知った顔だった。


 ゴネンはエビの背後に隠れ、背後から押し出されたエビが申し訳なさそうな顔で「ベルケス、せっかく来てもらったのに悪いな」と言い始めたところで、ベルケスと呼ばれた中年の男はその言葉が聞こえないように俺の顔を見て驚いた顔で俺を凝視した。


「……騒動があったと聞いたが、まさかあんたとはな」

「確か、テーブルを運ぶのに苦労していた男だったな。その後は困ってないか?」

「困ってたぜ?」


 その男は俺の腕を掴み、嬉しそうに言った。


「ずいぶんと探したんだ。お陰で宿の準備も終わってない。今度は礼をするまで逃がさんぞ?」

読んでいただいてありがとうございます。今後、週一、二度の更新になりますので、気に入っていただければブックマークをぜひお願いします。


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