追放されてしまった。
追放されてた「超戦士」のアーシュのゆったり人生が始まります。よろしくお願いします。
「これ以上お前はここにいてはならぬ」
と父上が言った。
来るべき時が来た、と俺は思った。
「わかりました。この国を出ます」
「うむ」
父上は「これを授ける」と用意しておいたらしい剣を鞘のまま俺の前に掲げた。
俺は近づいてそれを受け取り、その折りに父上の顔を見た。深く落ち窪んだ眼窩は何を見ているのかまったくわからなかった。
それでも、俺にとって父上は父上だ。育ててもらい、全てを教えてもらった恩があった。
俺は時間を掛けて脳に刻み込むように父上を見て、それから頭を下げ、その日のうちに最低限の装備を持って宮殿を出て、二日掛けて歩いて王国を出て上層に移動した。
第七層は、父上に従って何度も攻め込んだ場所だから見慣れていたが、第六層より上は俺にとっては初めての場所だった。
俺は一カ月以上かけて、第六層から第五層、さらに第四層、第三層、第二層を踏破して第一層に至った。
そこで初めて俺以外の人間を見た。
人間は五人いて、そのうち一人は死にかけていた。
人間を殺そうとしていたのはオルトロスと呼ばれる双頭の犬型魔獣だった。第一層のモンスターだから雑魚である。
俺は父上から預かった剣を抜いて一刀でオルトロスを斬り殺した。
死にかけた女を護るように双頭の犬に対峙していた女騎士が顔を上げた。
ポカンと俺を視た。
「あ、あ……」
だが女騎士以上に俺は動揺していた。
女騎士が余りにも美しかったからだった。俺とはまったく体つきが異なり、しゅっとしてきゅっとしてぼいんとしていた。
さらに俺の鼻腔に匂いが届いた。そのかぐわしい香りに俺は陶然となった。
何が起こったわからなかったが俺は危機を感じていた。俺は激しく発汗し、意味もなく発汗していることで動揺はさらに強まった。
「あ、いや、その……」
そして、
「失礼した!!」
と逃げ出した。逃げ出す以外に何も出来なかった。
なぜか涙がにじんだ。
俺はその涙を振り払うように走った。
俺がなるべき『真の戦士』にはほど遠かった。
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