世界が分かれる
「 ―― 《ノーム種族》のジャックは、『空の目』と話してた」
「 はああ??『話す』? あの、灰色の空に出るでっかい目玉と?どうやってだ? 目玉以外は何もないんだぜ?あんなもん、夜にでる『月』といっしょだろ!」
ぎゃははは、とあおむいて笑うのにこたえる女の声はさめていた。
「『ジャック』はほかの種族のはなしもよく聞いてくれた。 だから、いろんな種族がここに集まってたのよ。それを見てた『目』が、『おまえは話ができそうだ』って、ジャックを《上》に呼んだ」
「『うえ』だあ?」
「ああら?《キラ種族》のホーリー様でも知らないのね。 ―― この世界には、《厚み》があるのよ。いまここは一つだけれど、『空の目』がいうには、そろそろ世界は縦に分かれるのよ」
「――― くだらねえ、ホラばなしだ」
この世界を我が物のように思っていたホーリーには、信じられない話だ。
「なら、そう思っていればいいじゃない。『空の目』は、どうやら《キラ種族》が好きじゃないみたいよ。・・・・・それなのに、あなたは《ノーム種族》のジャックを、破裂させちゃった」
「だからどうしたっていうんだ?」
「――― べつに。ただあたしは、ジャックから知りえたことを、次の『主』であるあなたに伝えてるだけ」
感情もなくじっと見据えてくるブルーの目に耐えられなくなったように、スネイキーは床をあとずさり、テーブルクロスをまくりあげると、中へと消えた。