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後編

 ☆日本


 私はあれから、この女のお母様に、生活の習慣や作法をならい。

 この太った体を何とかしようと、和樹さんに教えられて、ジョギングを始めた。

 走る。まるで、カゲの訓練のようだが、心地よい。


「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、キツいですわ」

「姉ちゃん。無理しない。歩くスピードでいいから」

「はい」


 家に帰った。一人でシャワーを浴びられるくらいになった。

 初めは、服も一人で着られなかったが、この世界の服は一人で着られるように出来ている。

 合理的だ。


「姉ちゃん。ネットの見方教えてあげるよ」

「まあ、なんですの?」


 とても、便利なものを教えてもらった。

 この国は魔法が無いみたいだが、魔道具が進んでいる。魔素ではなく、電気かしら。


「ご飯ですよーーーー」


「フレデリカ君、日本の生活は慣れたか?」

「ええ、おかげさまで、娘様が戻ってくるまで、この体を健康に保ちますから、ご容赦下さい」


「「「・・・・・」」」

 三人は思った。このままでいい。一緒にいてくれないかと。


「ところで、お父様、陽子様は、この家で何をしていたのですか?平民の家庭では、それぞれ役割があると聞いておりますが」


「それはだな・・・学校に行っていたのだが、不登校になった」


「まあ、なんですの?」


 ・・・お話を聞くと、この世界では平民でも学園に行き。陽子様は、突然、いかなくなり。高等遊民生活を満喫していたようだ。


 文字は分るが、この世界の勉強は未知数だ。


 まず。和樹さんから、中学校の教科書を借りて、学び。

 基礎を学びながら


 高校にいくことにした。

 先生に事情を話し。記憶喪失であるとして、クラスも席順も分らない。

 だから、慣れるまで、保健室登校にして頂いたの。


 ☆学校


「はい、陽子さん。課題のプリントよ。何かあったら、呼んでね。休憩はチャイムに合わせて、出席になるからしっかりね」


「はい」


 キーンコーンカーンコーン


「まあ、販売機でジュースを買いますわ」


 廊下に出ましたの。


 そしたら、


「ブタ子テメー、ブスが学校にくるんじゃねえよ」

「記憶喪失だって、ウケる~」

「あたしだれ?ここはどこ?って?プ~クスクスクス」


「ギャハハハハハ、その辺にしなよ。早く、屋上に行こうぜ」

「いや、ブタ子連れて行こうぜ」

「ここでいいだろ。歩くATMだからな。ほら、有り金だしな」


 スタスタスタ~


 ・・・あら、何か。ブタ子さんという方に、男三人と、女三人が話しかけておりますわね。


「チィ、無視かよ。こっち来い!」


 あら、私?私は肩を掴まれて、屋上まで連れて行かれましたの。


「おい、お金くれよ。放課後、カラオケ行くのに金ないのよ。もちろん、お前は連れて行かないけどな」


「ダメですわ。これは、お母様から頂いたお小遣いですわ。貴方方のお母様にお願いして下さいませ」


「話し方、キモッ」


 ・・・あら、大変、もうすぐ、午後の授業だわ。


「エイ!」


「ああ、な・・・あれ、宙に浮いている」

「ヒィ、何、何?」

「「「キャアアアアアアア」」」


 ・・・私は平民6人を宙に浮かして、校舎屋上から見える鉄塔に運びましたの。

 天辺に、移動しましたわ。


「これで、大丈夫ですわ」


 ・・・はっ、この世界では、私も平民、うっかりしましたわ。罰せられるかもしれませんわ。これは正直に言わなければなりませんわね。


 ☆家


「ニュースです。私立底の辺高校の生徒6名が鉄塔の上に登る事件が発生しました。どうやって登ったかは不明です」


「まあ、フレデリカさんの・・・陽子の高校よね。怖いわ」


「お母様、実は、私がやりましたの」

「・・・・冗談がお上手になったのね」


 ・・・しばらくしたら、DQNの鉄塔ツリー飾りとネットミームになりましたわ。

 救助費数百万円・・・親が分割して払うのでしょうね。


 やりすぎたかしらと思ったけど、そうではなかったわ。


 数日後、校長先生に呼ばれましたの。


「君、屋上に入ったね。校則違反だ!」


「はい、先生、あの6人に無理矢理」


「他人の事はいい。あそこのカギは?」

「知りませんわ」

「停学3日だ!」

「それと、警察官が来ている。事情を話しなさい!」


 ・・・私はあの6人と衛兵さんに話をしましたわ。


「吉田陽子さん。この6名は、君に、魔法か気功で宙に浮かばされて、鉄塔に連れて行かれたと証言しているが・・」


「ええ、そのとおりです。私が重力を操作して、6名を運びました」

「ヒィ、そうです。その女がやりましたよ。俺たちは悪くない!」

「そうよ!」

「マジウケなんですけど!」


 ダン!

 刑事は机を叩く。あまりにも馬鹿げているからだ。


「・・・もう、いい。どうやら、脅迫して嘘の証言をさせようとしていたな。これは犯罪だ!校長先生、イジメは?」


「・・・いや、少し、彼女をイジっていると報告が」


「吉田さん。何かあったら、遠慮無く警察まで、相談して下さい。これ、名刺です」


 ・・・フフフ、あの衛兵さんはいい人ね。ここは、思わせぶりに


「・・・はい、でも・・ヒィ」


「気をしっかり持つんだよ。いじめられていい人なんていないんだ」



 ☆


 そしたら、その日の下校途中に、河原に呼び出されて、大勢に取り囲まれましたの。


「あたし~底の辺高校の理事長の娘なんだよ。これはもみ消せないとパパからお小遣い当分なしと怒られたんだから、お前のせいだ。

 皆、ボコって!」


「なあ、絵美やめないか?変だよ。こいつ」

「いいから、動画もとりな。こいつの無様な姿をネットでさらすのよ!」



「まあ、決闘ですね。受けましてよ」


「ファイヤーボール!」


 ボオオオオオオオオオーーーーーーー


「「「「ギャアアアアアアアアア」」」


 ・・・あら、虫の息になりましたわね。この辺でいいかしら。


「ヒール」


「ヒィ、誰か助けて!」

「大丈夫ですわ。認識阻害魔法をかけておりますから、ゆっくり、決闘できましてよ。さあ、三本勝負ですわね」


「ファイヤーボール!」


「「「ギャアアアアアアアーーーーーーー」」」


 ・・・・


「ふう。この辺でいいかしら」


「「「ハア、ハア、ハア」」」


「お前、何者だよ!」


「お前?」


 バキ!


「ヒィ、いて、今のは何だ!骨が・・・」


 まあ、私の世界では魔法を使えない部族には、対魔法戦闘があるけど、ここの世界は魔法に無頓着だわ。

 お母様にみっちり仕込まれましたわ。


「フフフフフ、スマホを全てだしなさい。それと、決闘に勝ったのだから、私の言うことを聞いて頂きますわ」


 私は記録されているかもしれないから、スマホを全て破壊し、絵美にあることを命じましたの。

 ウミは吐き出した方がいいですからね。


 ☆学校朝礼


「え~普通は「普く通じる」と言います。高校普通科は全てに通じる。そのつもりで勉強をするように、では、朝礼終わり」


「はい!理事長の娘!絵美、こ・・・これから、罪を告白します!私は吉田陽子さん。篠山君、その他複数の方々から、お金を巻き上げていました!恐喝していました!これから、自首します!

 ウウウウ、グスン、グスン」


「底辺さん!どうしたんだ!」


 彼女に、罪の告白をさせましたわ。

 これで、もう、悪い事できませんわね。

 そして、不祥事続きのこの学校の理事長は交代になり。校長もクビよ。

 絵美さんは、転校になりましたの。



 ☆異世界


「お母様、宝石ないじゃない。この部屋に、王子様からの贈り物があるって言っていたじゃない?」


 ガチャン!


「お母様?」


「・・・もうね。聖王国の聖女様に鑑定を依頼するまでもない。お前は誰だ?!」


「フレデリカですわ!」


「じゃあ、王子殿下の御年齢は?」

「え、私と同い年か一年上の設定です」


「間抜けだね。今年王子殿下は42歳だよ。男色でね。婚約者が決まらない。これは国家機密だよ。フレデリカは知っていた。白い結婚の話もあったのよ・・・それを知らないお前はフレデリカではない」


「そんな。じゃあ、私は転生者です!熱病の時に入れ替わりました!」


「なら、何故、その時に言わない。もう既に、お前が書いた異世界文字のノートも見つかっている。

 勇者様の国の文字だそうだね。翻訳は進んでいるよ。王妃になろってね。国家反逆罪の疑いもある。

 お前は、フレデリカが帰ってくるまで、体を健康に保て、それがお前の役目だよ!」


「そんな。隣国の王子は?大公殿下は?スパダリは?この際、国王の後妻でもいいですから!」


「スリープ!」


 ガクン!

 膝を落して眠りについた。


「・・・そのフレデリカの口で下世話なことを言うのじゃない!

 さあ、今のうちだよ。ベットに拘束しなさい」


「「「畏まりました」」」


「異世界人が来たら、正直に話せば、それ相応の生活を保証してやったものを、かの世界は平民だらけと聞く。

 どうして、平民が、貴族の真似が出来ると思ったのかね」



 ☆日本


 あれから、2年経過した。

 私は生徒会長になった。

 すっかり痩せ。焼き肉店にもいけるようになった。


「今日は焼肉に行きましょう。陽子の生徒会長就任祝いよ」

「やったー」

「お父様は?」

「会社の帰りによるから大丈夫よ」

 私は決断した。三人が集まった時に言おうと決めていた。


「あのお食事の前に、皆様にお願いがあります。皆様の家族に・・して頂きたいのですか・・ダメでしょうか?」


「もう、家族だよ。陽子」

「ええ、そうよ。娘だわ」

「自慢の姉ちゃんだよ」


「有難うございます。グスン、グスン、それと、陽子さんのことですが・・・」


「うん?」


「本物の陽子さんのことですが、恐らく、私と入れ替わったと思います。

 目が覚めて、私の向こうのお母様に、正直に話すでしょう。

 話したら、お母様は、決して、無体な真似をしません。

 きっと、下級貴族か、上級平民の生活を保障していると思います。

 私の世界ではたまに起こる現象です」


「なるほど」

「へえ、そうなのね」

「そうか」


 三人は今、本物の陽子を思い出した。興味のない返事をする。

 本物の陽子は、内弁慶で、家で暴れていたこと。乙女ゲームのつもりで、これ幸いと、黙って、フレデリカになりすますのだろうと。


 しかし、その話を口に出さなかった。


 1年後、吉田陽子は、底の辺高校初の東大合格者になる。





最後までお読みいただき有難うございました。

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