第8話 その議論はもう終わっている
協会を後にして裏庭へとやってくる。
「話には聞いていましたが、これほど大きいとは思いませんでした」
大体魔列車の半分くらいの長さで、太さは倍くらい。
これが空を飛ぶんだから、驚くのも無理はない。
なにしろ羽もプロペラも無いからな。
推進器が後ろに付いているとはいえ一部壊れているし、どうやって浮上しているのやら。
「ロローさんのイヤホン、持ってたよな。それを付けておけ」
「これをですか。壊れていると思うのですが」
壊れている?
解析したときに壊したんじゃないだろうな。
「タイム、どうなんだ?」
『壊れてないよ』
「顔ぐらい見せてやれよ。ずっとそのままというわけにもいかないだろ」
「しょうがないなぁ」
そう言うといつもの夏服セーラー姿で現れた。
時子は今私服だけど、制服を着たら見分けが付かないほど似ている。
ある一部分の大きさを除いて。
お陰で簡単に見分けられるから助かっている。
『今変なこと思わなかった?』
『気のせいだろ』
『ふーん』
ジト目で睨むな。
気にしているのは知っているけど。
言ってしまえば、タイムは時子と比べてスレンダーな体型をしている……ということだ。
誰だったか、歳取っても垂れないって言っていたから、身体的優位性なのでは。
「貴方は……確かタイム様でしたね」
「あっはい。えっと、イヤホンは壊れてないよ。耳に付けてみて。付け方は分かる?」
「わかります。これでいいですか」
『あってますよ』
「うわっ。なっ、なんですか今のは」
おお! めっちゃ驚いている。
『使い方を教えるから、静かにして』
「すみません。お願いします」
デイビーさんって意外と素直なんだよな。
実は割と好青年?
中央省というフィルターを無くせば悪い人ではないのかも……
それともその態度も中央からの指令?
タイムの説明を真面目に聞いているあのポーカーフェイスからは、なにも読み取ることが出来ない。
やっぱり仕事で仕方なく……なのかな。
「鈴、今のうちに搭乗員登録をしてくれないか」
〝了解〟
船外スピーカーから鈴ちゃんの声が聞こえてくる。
それにも驚いたようではあるが、目を見開くほどではないらしい。
いつもポーカーフェイスだからそれでも十分面白いけど。
「子供にやらせるんですかっ」
あ、そっちか。
それはそうなんだけど。
「色々話し合った結果だ。鈴もそれを望んでいる。無理に降ろそうとしても嫌がるんだ」
「だからといって危険な結界外調査に連れていくのは反対です」
そんなことは分かっているんだよ。
「だったらお前が説得してみせろ。無理矢理はダメだぞ」
「分かりました」
ま、無理だろうけど。
というか、この調子だと水槽の中に居る鈴ちゃんを見たらどうなるんだろう。
やっぱり乗せるべきではなかったか。
「ほら、よそ見しないで集中して。……どう、大体分かった?」
「はい」
「うん、後は実際に使って慣れてね」
「分かりました」
〝登録が完了しました〟
「よし、乗るぞ」
次回、やっと船に乗って中央省に向かいます