第76話 どうせなら……
はぁ、お腹空いたな。
お水は飲めたけど、そんなんじゃお腹の足しにならないよ。
「アニカ様、お清めの時間です」
「あ、はい。その……やっぱり貴方がするんですか」
「はい」
「そう……ですか」
うう、身体ぐらい自分で洗えるのに。
なんで人様に洗ってもらわなきゃいけないんだ。
もうそんな子供じゃないよっ。
そもそもなんで女の人なんだよ……って、当たり前か。
あーあ、なんで女の人になっちゃったんだろう。
ヤだなぁ。
みんなと入ったお風呂場に向かう。
でも入る場所は違うんだ。
寝るところと同じで裏手に別の入り口があって、そこから入るんだよね。
昨日はみんなと同じところだったのに……
なんでだろう。
「失礼します」
あ、そっか。
服を脱ぐのもこの人がやってくれるのか。
「……はい」
服ぐらい自分で脱げるのにぃ。
ううっ、完全に子供扱いだ。
どうせならモナカくんに脱がしてもらいたいなぁ。
お風呂場はあんまり広くないな。
モナカくん家と比べたら結構広いけどさ。
それにあんまり綺麗とは言えない。
こんな場所で本当に清められるの?
「お湯加減は如何ですか?」
「……はい。大丈夫です」
「では洗わせて頂きます」
「……はい」
嫌だけど、断っても終わらないんだよね。
うう。
「アニカ様。その……お手を退けて頂けませんか」
「あ……ははは」
隠すことも出来ないなんて。
どうせならモナカくんに洗ってもらいたいなぁ。
今なら魔力操作に集中することなくリラックスした状態で洗ってもらえるのに……
はぁ……
幸いなのがなるべく肌と肌が触れないようにしてくれるところかな。
多分毒素に冒された人に触らないようにということなんだろうけど。
〝ボクに触っても大丈夫ですよ〟なんて言ったところで信じてくれないだろうし、なにより万一信じちゃって触られても嫌だよ。
腫れ物扱いの方がいいよね。
はぁ……早く終わんないかなぁ。
「それではアニカ様、お湯を流させていただきます」
「……はい」
やっと終わったぁ!
早く身体を拭いて服を着ようっと。
「失礼します」
ああっ、それもこの人がやるんだった!
もー自分で出来るのにぃ。
どうせならモナカくんに着せてもらいたいなぁ。
「アニカ様はお元気そうですね」
「そうですか?」
「はい。魔神様になられた方を含めても、アニカ様のようにお元気な方はお一人もいらっしゃりませんでした」
そういえば他の人はみんな立つことも苦しそうだった。
だから世話役なんて付いているんだ。
尚のことボクには要らないよぅ。
だってボクには精霊たちが居るんだから。
次回、顎クイです




