第6話 本題
「そして」
「まだあるんですか?」
出て行く気満々だったのに、まだなにか要件があるっていうのか。
「はい。むしろここからが本題で御座います」
本題……デニスさんについての報告すら前座だというのか。
「エイルを中央にという話でしたら」
「いえいえ、そのような指令は受けておりません。個人的には今すぐにでもと思っているのですが」
「では、なんでしょう」
エイルじゃないとすると、ナームコか鈴ちゃんってことだろうか。
『あれ?!』
急に素っ頓狂な声を出すな。
『タイム? どうかしたのか』
「僕も乗船させて頂きます。これは決定事項で、拒否できません」
「はあ?! さっき拒否してもいいって言ったばかりじゃないかっ」
「結界をまた壊されてはたまりませんから。その監視役ということで御座います」
そう言われるとなにも言い返せない。
いや、そんなことはないぞ。
「もう壊すことはありませんっ。実際、今回は壊さず出入りしました」
「今はまだ影響がないだけかも知れません」
確かにそうだけど……
「信用できませんか」
「未知の技術に対して慎重になることは当たり前でしょう」
確かにそうだけど……
『やっぱりだ!』
タイムはタイムでなんなんだよ。
『どうした?』
『中央省に潜り込ませたタイムのコピーが居なくなってる』
『潜り込ませた?』
というか、コピー?
四天王とかナースとは違うってことだよな。
『うん……見つかって消去された様子もないし、そもそも不可能なはず。なんで?』
いや、なんでと聞かれても分かるはずがない。
『居ないとどうなるんだ?』
『中央省にハッキングが出来なくなるんだよ』
逆に今まではしていたのかよ。
『コピーがこんなこと許すはずがないと思ったら……』
『とにかくその話は後だ』
『うー……』
「よろしいですね」
受け入れるしかないのか。
なにか回避する手は……手は……
定員オーバー……はエイルが抜けたから使えない。
となると。
「船長は僕です。船に……エターナル・アトモス号に乗るからには僕の指示に従ってもらいます」
せめて主導権は握らせてもらわないとな。
「はい、そうするよう指令を受けています」
織り込み済みだったのか。
「分かりました。ですが、僕たちが外に行くのはエイルを探すためです。それ以外でアトモス号を動かすつもりはありません」
結界外調査の足として都合よく使われるつもりはないぞ。
「探す当てがあるのですね」
痛いところを突きやがる。
「……ありません」
「そうですか。ではこういうのはどうでしょう。エイル様のお父様・デニス様の道筋を辿ってみませんか」
「デニスさんの?」
「そうです。当てもなく探し回るよりよろしいかと」
「でもどうやって……」
記録が残っているとでも?
そうか身分証。
データが生きていれば……でも外はサービス圏外だったよな。
そんな状態で機能していたのか?
次回、狩猟協会編 最終話です