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第62話 若いヤツは振り向いた方がいい

「どうかしたの?」


 時子も出てきたのか。。


「のぼせたみたいだ」

「鈴、大丈夫?」

「はい、平気です」

「あんまり無理をしたらダメよ」

無理(むい)はしてません」

「のぼせるまで浸かってるのは、無理してるっていうのよ」

「のぼせてなんかいません。平気です。ほ()

「あっ鈴! まだ動いたらダメだよ。大人しくしてなさい」

「パパ、もう平気だよ。鈴、立て()よ」


 立てるよって、まだフラフラしているじゃないか。

 っと、だからといって無理矢理横にしようとすると余計〝平気だよ〟ってなるだろうし……


「鈴、横になってなさい。今無理して船が動かせませんってなったらどうするの」

「あう……はい、分か()ました」


 え、そういうこと言う?!

 確かに鈴ちゃんにとっては船を動かせなくなることこそ一番怖いことだけど……

 でも無理をしているって自覚はあったんだな。

 今度は〝無理はしてません〟って言い返さなかったし。

 時子のお陰で鈴ちゃんが横になってくれた。


「ありがとう、助かったよ」

「…………はぁ。なにやってるのよ。こんなになるまで無理させて」

「う……面目ない」

「パパは(わゆ)くあ()ません。鈴が(わゆ)いんです」

「いいえ。保護者として子供の体調変化に気づかないのはダメなの。鈴は悪くないのよ」


 時子の言うとおりだ。

 ただ可愛がったり一緒になって遊んだりしているだけじゃダメなんだ。

 俺がちゃんと見てなきゃいけなかったんだ。


「鈴、気づいてやれなくてごめんな」

「ううん。パパ、あ()がと」

「ん?」

「あおいでく()()から」

「そっか」

「タイム伯母さんもあ()がとうございます」

「どういたしまして」

「服着てきたら代わるから、待ってて」

「ああ」


 ……ん?

 〝服着てきたら〟?

 着ていなかったのか!

 振り返らなくてよかったー。

 振り返っていたらどうなっていたことやら……


「お待たせ」

「あ、ああ。早かったな」


 ……振り返っても大丈夫だよな。


「髪乾かしてないからね。さ、モナカも着てきたら」


 よかった。

 ちゃんと着ている……って、当たり前か。


「ああ。ありがとう」

「…………お姉ちゃん、髪乾かしてくれない?」

「いいよ」


 ? なんか見つめられたような。

 しかもあんまりいい感じがしなかった。

 気のせいかな。

 なにも言わなかったし、直ぐタイムの方を向いたし。

 とにかく着替えて戻ってこなきゃ。


「スズ様の具合はどうですか」

「のぼせたみたいだ。今横にさせて、時子があおいでやっている」

「ここの湯は少し熱めですから、身体の小さなスズ様にはキツかったのでしょう。100までは多すぎたようですね」

「そうだな。反省している」


 俺も最後の方はちょっと辛かったからな。

 そのとき気づいてあげていれば……って、それじゃ遅いか。

 これでよし。戻るぞ。


「鈴! 着替えを持ってきたぞ」

「シーッ。静かに」

「ああ、そうだな。悪い。ナース(タイム)、具合はどうなんだ?」

「水を飲ませて安静にしてれば大丈夫よ」

「そうか……よかった。えーと、洗面台は……」

「ダメよ。そこの水は飲み水じゃないの。ここはマスターの居た世界とも、クラスクとも違うのよ」

「分かった。じゃあダイスさんに頼んでくる」

「待って。それは私がやるから、モナカは鈴を連れてきて」

「あ、ああ」


 鈴、寝ているのか?


「パパ……」

「ここにいるぞ。今服を着せてやるからな」


 意識が朦朧としているのか?

 ナース(タイム)が大丈夫って言うんだから大丈夫なんだろうけど。

 身体は時子が拭いてやったらしい。

 このまま着せてやっても大丈夫そうだ。


「自分で着られる(やえう)よ」

「いいから。大人しくしていなさい」

「はい。ごめんなさい」

「娘、無理をして兄様に迷惑を掛けるな」

「ナームコ! そういう言い方は無いだろ。それに俺は迷惑だなんて思っていない」

「申し訳ございません。ですが躾は大切なのでございます」

「躾だとしても、そういう言い方じゃなくてだな」

『スズ様の育った環境を考慮するならば、むしろ優しく申した方なのでございます』

『育った環境……そうかも知れないが、それを直したくて――』

『ならば、その環境を利用して少しずつ改善されるのがよろしいかと存じるのでございます。空元気も元気なのでございます』

『それは……1つの手かも知れないけど、その環境を肯定しているようで嫌なんだよ』

「……スズ様、無理をなされては故障率が上がってしまわれるのでございます。そうならぬよう、きちんとリスク管理をしなければならないのでございます」

「うゆ……はい」

「ナームコ、今鈴に必要なのはお説教じゃなくて休息だ」

「そうでございました。スズ様、たっぷり兄様に甘えるのでございますよ」

「うにゅ……」

「娘」

「は、はい。分か()ました」

「ナームコ」

「やはりわたくしには似合わないのでございます」


 まったく。

 自発的に甘えるのと強制的に甘えさせるのじゃ全然違うだろ。

 よし、着せ終わったぞ。


「パパ……」

「うん、ママのところに行こうな」

「ん……あ()がと」

次回、拒絶された……だと

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