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第60話 ナユダの過去

 夕飯の内容は昨日と大差はない。

 ナユダさんと比べて野菜や肉が大きめに切られているくらいか。

 しかもナユダさん以上に形がバラバラだ。

 味付けはやはり無いと言っていい。


「おいしくなぁれ。おいしくなぁれ。はい兄様っ」

「ありがとう」

「さ、皆様もお貸しになるのでございます」

「本当に貴方方は変わったことをするな。それもそっちでは当たり前なのか」

「一部では見かける光景ですね」


 一般家庭ではまずやっていないだろう。


「みんながやるのではないのか。ますます変わってるな」


 ここだと誰もが同じことをするのが当たり前で、一部だけがやるなどはないらしい。

 仕事内容も定期的に入れ替わり、全員が全ての仕事を熟せるようになっているそうだ。


「「「いただきます」」」

「昨日も聞こえてきたな。なんだそれは。そっちでは当たり前なのか」


 あーもー定番になってきたな。


「かくかくしかじかで――」

「感謝か。やはり変わってるな」


 仕事だから当たり前……か。

 当たり前でも、やっぱり感謝は大事だと思う。


「ナユダさん、大丈夫でしょうか」

「理由がなんであれ、罰は当然だ。貴方方が気にすることではない」

「気になりますよ。酷いことされてなければいいんですが……」

「大丈夫だ。ナユダが罰を受けるのは今回が初めてではない」

「そうなんですか?!」

「あまり大きな声を出すな」

「す、すみません」

「……いいか。ナユダは元間者だ」

「間――」

「静かにしろっ」

「――うぐっ」


 手で口を塞がれてしまった。

 というか間者?

 スパイとかのことだっけ。

 元ってことは、リーダーをすることになったから止めたのか?


「ナユダは魔神(まがみ)様側の情報を探ってたんだ。そしてその情報を彼らに渡していた」

「彼ら……」

「言わなくても分かってるだろ。初めの頃は大したことない情報ばかりだったらしい。しかしあるときを境に正確で重要な情報を持ってくるようになったんだ」

「あるとき?」

「罰を受けた頃からだ」

「罰ですか。どんな理由で?」

「さぁな。みんなの前で連れて行かれたわけじゃない。ウッド様から〝ナユダは罰を受けることになった〟と聞かされただけだ」

「ウッド様?」

「ワン様の前にここを守護していた魔神(まがみ)様だ。みんなから慕われていたが、ナユダを魔物から救うために戦われ、相打ちになられたのだ」

「そうでしたか」

「ナユダは理由を話さない。罰の内容も話さない。だから理由も罰の内容も、いまだに分かっていない」

「どうして話さないんでしょう」

「さぁな。私に分かるわけがない」


 それもそうか。


「ただ、そのとき罰したのがダボ様らしい」

「今回と同じ人……」

「人じゃない。魔神(まがみ)様だ」

「あ、ああ」

「だからというわけではないが、今回も大丈夫だ。それより気をつけろ」

「なにをですか」

「ナユダだ」

「ナユダさん……ですか」

「前リーダーが死んだのはナユダが原因だ」


 またナユダさんが絡んでいるのか。


「彼女が絡むとろくなことにならない。だから気をつけろ」

「ふむ。ではあの中で彼女が原因で不幸になられた方が多数いらっしゃるのですね」

「どうかな。他集落のことは私には分からん」

「そう仰いますが、かなりアレの内部情報に詳しいように思われます。僕としてはそちらの方が怪しく感じてしまいます」


 はっきり言うなあ。

 駆け引きってヤツか?


「知り合いがあの中にいるんだ」

「そういうことでしたか。なるほどなるほど」


 知り合い……ナユダさんじゃない誰かってことだよな。

 でもダイスさんはレジスタンスじゃない。

 なのに色々と知っている。

 幾ら知り合いでも部外者にそんな簡単に色々と話すだろうか。

 デイビーが警戒するのも無理はない。

 俺自身、少なからず警戒しているのは事実だ。

 でも親子のことを知りたいと言っていたあの顔は、俺たちを騙そうとか陥れようとかしているようには見えなかった。

 だからダイスさんは信用してもいいのでは……と思う。

 それは浅はかな考えなのだろうか。


「「「ごちそうさまでした」」」

「…………食器を片付けてくる。風呂の仕度が出来たと言われたら入ってくれ。私はみんなと入る」

「俺たちとは入らないんですか?」

「ああ」


 世話役なのにそれでいいのか?

 ナユダさんは入ったんだけど。


「それに神獣様の夕飯を用意しなければならないからな」


 フブキのご飯!


「俺もやります」

「私の仕事だ。必要無い。味付けの件は聞いている。安心しろ」

「そう……ですか」


 フブキにとってここのご飯は美味しいのかな。

 量は足りているのかな。

 ああ、散歩に行きたい。

次回おっ風呂~

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