第55話 密告?
隠し扉を開いて馬小屋に戻ってきた。
なんか、また長い階段を上り下りしたな。
「遅いぞ」
「話が長引いちゃって。それから彼らが協力してくれるって」
「本当か!」
「ええ。詳しくは後でね」
「ああ」
やっぱりこの人もレジスタンスの一員なんだろうな。
「貴方方、何処に行ってたの!」
「ダボ様! ヤバいな。見つかっちゃった」
おいおい、見つかったこと無いんだろ。
大丈夫かよ。
でもまた新しい魔神だ。
これで5人目か。
「何処へ行ってたの。居場所を明確にするよう言われていたでしょ」
……そうだったっけ?
確かに外部の人間だからな。
あちこち歩き回って所在不明はマズいか。
「申し訳ありません。私が勝手に連れ回しただけです」
「何処へ連れて行ってたの?」
「そ、それは……その」
「来なさい。貴方には罰を与えるわ」
ヤバい! なんとかしないと。
「すみません。俺たちがあれが見たいこれが見たいと――」
「口を挟まないでもらえますか。これは私たちの問題なの」
くっ、とりつく暇もありゃしない。
※ ×暇 ○島
「私は大丈夫だから」
「ナユダさん……」
「貴方方には別の世話役を付けます。そこの貴方! 今から彼らの世話役になりなさい」
「承知しました」
あれは確かダイスって人だったか。
「初めまして。私はダイスといいます」
「え?」
「しっ、話を合わせて」
「は、初めまして」
話を合わせろってなんだ?
初対面にする必要あったのかな。
「引き継ぎの時間を頂けますか」
「ダメよ! さっさと来なさい」
さっさと来いという割には引っ張って連れていくような真似はしないんだな。
素直について行っているからその必要が無いということか。
「どうしてダボ様がここに居るんだ」
「居たら変なのか?」
「ここはワン様とドライバー様が管轄している場所だ。貴方方が来たときのような自体でもない限り、他の魔神様がやってこられることはまず無い」
そういえば最初に現れたのはワンさんとドライバーさんだったな。
で、少し遅れてアルバトロスさんがやってきた。
今回は2人が現れず、ダボさんだけが現れた。
「だから不自然なんだ」
「というと?」
「……密告だろうな」
「密告?!」
「彼らを快く思わない者が少なからず居る。そういった人たちが密告したんだろう」
「ナユダさんがなにをしているか知っているのか!」
「ああ。しかし私は違うぞ」
違うってことは、レジスタンスじゃないってことか。
部外者に情報が漏れているじゃないか。
本当に秘密の組織なのか。
組織自体は知られているけど、メンツは知られていないって感じかな。
「正体が分かっているなら、それを魔神様に言うんじゃないか?」
「確証が無ければ自分が罰せられる。それに魔神様もいちいち相手にしていられるほど暇じゃない。だからこそダボ様がここに居ること自体、おかしいんだ」
「確証があった可能性は?」
「それならみんなが居る前で連れて行く。仮に正当な手順が踏まれていたとしても、ワン様が同席していない時点で矛盾している。おかしなことだらけなんだ」
「密告ならワンさんでもいいのでは?」
「大きな声では言えないが、ワン様は魔神王様をあまり好まれておられない。対してダボ様は崇拝しておられる。そういうことだと思う」
なるほど。
「ならどうやってダボさんに密告したんだ? 他集落の人との接触は禁止されているんだろ?」
「ダボ様は魔神王様を崇拝するあまり、魔神王様の利になることなら見て見ぬ振りをする傾向がある。そんな些細なことは気にも留めない。それにダボ様は〝人間〟ではない」
〝人間〟ではないから接触することは問題ない。
理屈じゃそうだけど、会いに行くまでに他集落の人と接触するはずだ。
見て見ぬ振り……か。
「少し待っててくれ。仕事の引き継ぎをしてくる」
「ああ」
ナユダさんは俺たちの世話役だ。
悪い意味で俺たちは目立つ存在。
だからこそ監視しやすい。
それでバレたってことなのか。
でも秘密の入り口まではバレていなかったらしい。
組織としてはセーフ?
尋問されて口を割る……なんてことはリーダーなんだからしないと思うけど。
「待たせたな。この後の予定はなんだったんだ?」
「今日は進化の儀を見学することになっているよ」
「〝進化の儀〟……か。分かった。行こう。もうじき始まるはずだ」
次回、ところ変わりましてアニカです




