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第51話 野菜スープに肉を入れるか入れないか

「鈴ちゃん、これと一緒に食べて」

「うんっ」

「なんだそれは」

「野菜スープだよ」


 なんか1人で煮込んでいると思ったら、スープを作っていたのか。

 ……現地の人に作らせるんじゃなかったのか。


「……肉が入ってるようだが?」

「入ってるよ」

「スープに肉?」


 こっちだと肉は入れないのか。


「そういえばさっき骨も砕いてなかったか?」


 豚骨? 牛骨? なんの骨だろう。


「いい出汁が取れるんだよ」

「……ダシ?」

「おいしさの元だよ」

「おいしさの元……」

「ホントは昆布があればよかったんだけど。さ、貴方たちの分もあるから飲んで」

「あ、ああ」

「ありがとう」

「え?」

「ん?」

「貴方……今〝ありがとう〟って言ったの?」

「言ってないわ」

「嘘! 私聞いてたんだから」

「言ってた?」

「ああ、私も聞いたぞ」

「……そう。私言ったのね」

「みんなどうしちゃったの? なんか変だよ」

「でも彼らに協力を求めるなら、いい傾向だと思う」

「そうだな。私もそう思う」

「そうね」

「そう……」

「変わるのは悪いことではないぞ」

「私は変わりたくない。今のままがいいの」


 あれ、なんか意見が割れちゃったみたいだ。

 ご飯1つでこれか……


「難しい話は後々。(あった)かいスープが冷めちゃうぞ☆」

「そうだな。飲もう」

「ええ」

「イタダキマス」

「ああそうだ。イタダキマス」

「イタダキマス。ほら、ナユダも」

「ええー……」

「いいのよ。強制するものじゃないから」

「…………でもこんな骨が入ったスープなんか飲んで平気なの? 畑の肥料なんだよ」

「ものは試しだ」

「そうそう。あ……」

「どうしたの?! やっぱり身体に毒なんじゃ……」

「う、これは……」

「ナユダ、飲まないんなら貴方の分ちょうだい」

「いや、私が貰おう。ナユダの身体にはよくない」

「のっ飲むわよっ!」


 と言った割にはスプーンにすくったままジッと見つめて動かない。

 随分と苦い顔をしていて、まだ決心が付かないようだ。


「ごちそうさまっ! タイム伯母さん、美味しかったー!」

「ふふ、ならよかった」

「うんっ! うゆ? ナユダおばさん、飲まないの?」

「の、飲むわよっ! てゆうか、私は貴方のおばさんじゃないわよっ」

「いえ、この場合のおばさんはそういう意味ではなくて歳痛っ!」

『要らないこと言わないの!』

『ご、ごめんなさい』


 時子は容赦ないな。

 段々肘鉄の威力が上がってきていないか?

 スープとにらめっこをしていたナユダさんが意を決してスプーンを口の中へ運ぼうとしている。

 腕がプルプル震えていてスプーンからスープが殆ど溢れてしまった。

 そして僅かに残ったスープを、目を瞑りながらパクリと咥えた。

 暫く固まっていたかと思うと、目を見開いて勢いよく食べ始めた。


「おいおい。畑の肥料じゃなかったのか?」

「ふふはいはへ。はべはひんばっぱはははひばはべふはほ」


 ……なんだって?


「あ、こら! それは私の分だぞ!」

「ははひほほばひべふー!」

「ふふ、お代わりならあるぞっ」

「オカワリ? それはどんな食べ物だ?」

「食べ物じゃなくて、同じ物をもう一度よそってあげるってことだよ」

「同じ物?」

「……食べていいのか?」

「したことないの?」

「体格によって多少差はあるが、みな同じ量を食べる。1人だけ特別に多くということはない」

「貴方たちもそうではないのか?」

「タ、ベーカー(タイム)は……」

「俺たちも基本的には同じだけど、お代わりは自由だぞ」

「そうなのか」

「ほははひ!」

「ナユダ、口にものを入れたまま喋るな」〝〟

「むー、もぐもぐもぐもぐ………ごくん。オカワリ!」

「貴方は私の分を食べただろうが!」

「自由なんだからいいでしょ!」

「だからといって……ん? 貴方は食べないのか?」

「え、えーと……その」

「タイムは妖精界(フェアリーランド)の住民だから、こっちの食べ物は食べられないんですよ」

妖精界(フェアリーランド)?!」

「実在するんですか!」

「えっと……その、う、うん」

「でも本と随分違わない?」

「そうだな」

「ほら、本はフィクションだから現実と違って当たり前ですよ」

「なるほど」

「それもそうね」

ベーカー(タイム)のことは気にしないで。ほらほら、お代わりは要らないのかな☆」

「オ・カ・ワ・リ!」


 ナユダさん、がっつきすぎ。


「じゃあ、私もオカワリ」

「私も欲しい! オカワリ」

「はいはい、器を寄越して」


 やっぱり美味しい食べ物は人を笑顔にするんだな。

 全然表情が違う。


「ありがとう。イタダキマス」

「ふふっ、〝いただきます〟は最初だけでいいのよ」

「そうなのか? でも、なんとなく言いたかったんだ」

「なら気にせず言っていいと思うわ」

「うむ。イタダキマス」


 すっかり〝いただきます〟が浸透したみたいだ。

 ナユダさんは言わないけど。


「それで、ナユダ様は僕たちを食事会に誘われたのでしょうか」

「あっ! そうね、本題はこれからよ」


 本題……

 ここに連れてくることが本題じゃなかったのか。

次回、家畜は食べ物

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