第27話湯船とは一体……
夕飯か……
俺たちも船に戻って仕度をするか。
「それじゃ、食事を用意してくるから待っててね」
「えっ」
「ありがとうございます」
デイビーは貰う気満々だな。
確かにここの食事事情を知るいい機会だ。
断る理由なんてない……といったところか。
……ここで待っていればいいのか?
「あっそうだ。ワン様、神獣様のお食事はどう致しますか?」
神獣様って、フブキのことだよな。
「そうか。ナユダでは用意できなかったな。私の方でなんとかしよう」
「お願い致します。それでは」
どういうことだ?
「ワン様、フブキ様のお食事は私たちと同じ物でよろしいのでございます」
「………………あ?」
「ワン様、フブキ様のお食事は私たちと同じ物でよろしいのでございます」
「すまんが、貴方がなにを言ってるか分からないぞ」
そうだ。
ナームコだけ言語が違うんだっけ。
……また俺が通訳しなきゃならないのか。
「通訳者が通訳します」
「おお? 貴方は……タイム……いやライム? いや、私の肩に乗るな! 神気に当てられるぞ」
「通訳者です。神気に当てられる心配はありません。ご安心ください。ワン様、彼女は……」
服装は違うけど、区別つかないよな。
普通そんな何人も居るなんて思わないだろう。
「……なんだと? 貴方たちのところの神獣は人間と同じ物を食ってるのか」
「味付けは薄めでございますが、概ね同じ物なのでございます」
「そうなのか。本当に違うことが多いんだな」
『ワンさんが用意してくれるってんだから、それでいいんじゃないか?』
『それは止めた方がよろしいのでございます。恐らく、魔獣向けのお食事でございましょうから』
魔獣向け……なるほど。
確かにそれはまずいな。
「ナユダ、聞こえてたな。そういうことだ」
「かしこまりました」
「それとスズ様を先に洗わせて頂いてもよろしいでございますか?」
「んあ? 風呂場は使わせられないぞ」
「承知しているのでございます」
「構わないが、監視はするぞ」
「ワン様は幼子の裸にご興味がおありなのでございますか?」
「ナームコ、なに言っているんだ」
失礼にもほどがあるだろ。
とはいえ、幾ら監視のためとはいえ、堂々と〝見るぞ〟と言えるのも凄いな。
「興味? そうだな……」
え、あるの?!
「王が言うような猛毒を被ってるのによく生きてるな、という興味はある」
あ、そっちか。
「左様でございましたか。失礼したのでございます。それでは兄様、スズ様、外に出るのでございます」
「え、俺も?」
「お手を煩わせて申し訳ございません」
「なんでだ?」
「湯船を出していただきたく存じるのでございます」
「はあ?!」
そんなもの、持っていないし出せるわけもない。
なにを言っているんだ。
『タイム様に出していただきたいのでございます。可能でございますか?』
そういうことか。
タイムのことは極力知られないようにした方がいいからな。
特に弱点となるところは知られたくない。
『んー。マスター、お風呂の3Dデータを買ってもいい?』
『幻燈機用のデータか。構わないぞ』
『じゃ、マスターが選んで』
『選ぶ?』
『色々種類があるんだよ』
そう言って目の前にお風呂の一覧がズラリと並んだ。
こんなに種類があるのか!
しかもスクロールバーがあるから表示しきれていない物がまだまだあるってことだよな。
「どうした。洗うのは構わないがここでやるな」
「はい。じゃ外に出よう」
歩きながら選ぶか。
でも選べと言われてもな……なんでお風呂なのにタライが表示されているんだ。
おい、こっちはキッチンじゃないのか。
明らかにお風呂じゃないだろ。
『タイム、これは……』
『え?! マスターはこういうのが趣味なの?』
『そうじゃなくて! 明らかにお風呂じゃない物が含まれているよな』
『そうだね……でも[湯船]の分類タグが付いてるよ』
はあ?! ……マジに付いていやがる。
3Dデータだからそういう遊び心があってもいいということか。
でも[キッチン]の分類タグも一緒に付いているぞ……まあいい。
しかし鈴ちゃんが使うんだから無しだろ。
もっと普通の……
『これは?』
『んー、カーテンが付いてないから丸見えだよ』
そういうことは先に言え。
『もータイムが選んでくれよ』
『じゃあ……これにしよっか』
あーテレビでよく見る西洋風のバスタブにカーテンが付いているヤツか。
あれってどうやって使うんだろう。
確かお湯を溜めて浸かる習慣なんてないはず。
『いいんじゃないか』
お風呂は決まった。
「わふっ!」
「フブキー! 元気にしていたか?」
「わうっ!」
「そうかー、でもごめんな。散歩じゃないんだ」
「わう?」
「鈴を洗いに来たんだ。だから大人しくしてて、な」
「わふっ!」
折角フブキに会えたのに、悲しい。
また後で来よう。
次回、作者本人も数えたことがありません




