第25話 生活の違い
俺たちを横目にみんなゾロゾロと入っていく。
誰も来なくなって暫くするとワンさんが戻ってきた。
「遅くなったな。ナユダ、全員揃ってるか確認してきてくれ」
「はい」
「その間に簡単な説明をしておくぞ。といっても、王が言ってたことがほぼ全てだ。それに法の違いとか習慣の違いも、私たち自身分からないから話しようがない」
確かに。
知らない相手と自分の違いなんて分かるはずがない。
相手を知って初めて違いが分かるものだ。
「では、ここでの生活習慣を教えていただけますか」
「そうだな。ここに暮らしてるのは人間が100人。朝起きたら食事当番が飯を作る。他の者は仕事の準備だ。飯を食ったら各々仕事を始める。日が傾き始めたら仕事を終わらせてここに戻ってくる。食事当番が飯を作り、他の者は片付けをする。その後風呂に入って寝る。といったところだ。なにか質問は?」
物凄くザックリだな。
まーでも俺たちと大差ないか。
大人数で一緒に居るのはともかく、大体の人がこんなもんでしょ。
特別聞くようなことは……
「他の場所も同じですか」
……無いかと思ったが、デイビーが勝手に質問を始めた。
「そうだ」
「そこも人間が100人ですか」
「そうだ」
「建物の構造も同じですか」
「そうだ」
「魔神様もいらっしゃるのですか」
「そうだ」
「仕事内容はどのような――」
……細かいな。
さすが専門家。聞くことが沢山あるようだ。
交渉ごとは全て任せておけばいいか。
「昼食は取らないのですか」
そういえば昼飯のことはなにも言っていなかったな。
「チュウショクとはなんだ」
〝昼食〟を知らない?!
「お昼に食事をすることです」
驚きもせず相変わらずのポーカーフェイスで淡々と答えている。
このくらいで驚くな……とでも言いたいのか。
「昼間は仕事だ」
「いえ、そうではなく……太陽がてっぺんに来たとき、食事は取らないのですか?」
「変なことを聞くな。貴方のところは食べるのか?」
変なことなのか。
「こちらでは一般的ですね」
「そうか。ここでは食べないのが一般的だ」
朝夕の2食か。
お腹空かないのかな。
「先ほど戻ってきた人たちの中に子供が交じっていたようですが、子供も仕事をされてるのですか」
「子供? 混じってなかったぞ」
「小さな子が混じってたように見えましたが……」
「ああ、年少者のことか。あれもれっきとした大人だ」
「10歳にも満たないように見えたのですが……」
「そうだな」
「大人……ですか」
「そうだ」
「子供とはどういった者のことを指しますか」
「会話と、フラつかずに歩くことが出来ない者……だな」
それってつまり3歳か4歳くらいでもう大人ってこと?!
フラつかずってどのレベルだろう。
「そうですか。僕たちでは15歳未満の者を子供といいます」
「15?! 年齢で区切るのか。はー、しかしそんなんでよく働き手が足りるな」
「勉強はしないのですか」
「してるぞ。年長者が教えている」
「仕事ではなく……学業はどうなっていますか」
「ガクギョウ?」
「文字や計算、世界の理や歴史など、知識や道徳を勉強することです」
「すまんが、なにを言ってるかが分からん。だが計算なら教えてるぞ。仕事が出来なくなるからな」
「そうですか……」
つまり学校がない?
宿題も試験も塾もない?
そして夏休みも……
でも計算……数学だけはあるんだ。
国語は?
「魔神様はなにをしているのでしょうか」
「私たちは見回りをしてる。魔物が現れれば退治する。魔獣が生まれればその対処もする」
「他には?」
「特に無いな」
無いのか。完全に警備兵だ。
「貴方のとこの魔神は違うのか」
「そうですね、大差はありません」
〝こっちにも魔神は居る〟ってことにしてあるから、そう答えるしかないか。
次回、また彼女がのけ者にされます




