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携帯は魔法杖より便利です 第5部 歪な共生  作者: 武部恵☆美
第2章 違いを知るためには
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第22話 普段とは違う光景

魔神(まがみ)様、少しよろしいですか」


 牧場の人かな。

 こっちに近づいてきてワンさんに話しかけてきた。


「ん? なんだ」

「実は………………」

「………………ん、そうか。分かった。モナカ、すまんがあのヒコウセンを移動してくれ。牛たちが脅えて柵の中に入らねぇんだとよ」


 そういえば蜘蛛の子を散らしたように逃げ出していたっけ。

 そんなに威圧的な見た目していないんだけどな。

 牛にとってはサイロくらいにしか見えないと思うんだけど。


「何処にですか」

「あーそうだな……おい、何処かいい場所はあるか?」

「先日収穫の終わった畑でしたらよろしいかと」


 畑?!

 牧場だけじゃなくて畑も持っているのか。

 多角経営ってヤツかな。


「あそこか……いいだろう。案内してやってくれ。その後は長屋まで連れてきてくれ。私はその間にみんなを集めてくる」

「は……はい」


 ああ、牛だけじゃなくて貴方も脅えているんですね。

 初めて見る外の人間だからな。

 こんな怪しい乗り物に乗っているし。

 黒船来航みたいなものか?

 さて、アトモス号を移動させるわけだが、それだけのためにまた鈴ちゃんがあの水槽に入らないといけないのか。

 面倒だな。面倒でもやってもらうしかない。


「鈴、頼めるか?」

「兄様、移動程度でございましたらスズ様の手を煩わせる必要はございません。そうだな、娘」

「はい、残存エネ()ギーで動かせます」

「そうなのか。俺はまたあの水槽に入らせなきゃならないのかと思ったよ。でも入らなくて済むならよかった」

「鈴は平気だよ。水槽の中、(きや)いじゃないよ」

「分かっているよ。だからそんな悲しそうな顔をしないでくれ」


 水槽に入らせたくない=もう入らなくていい=鈴は要らない子ってまた変換しちゃったのかな。

 必死な形相で〝鈴は平気だよ〟なんて言わせてしまった。

 んー、本当に難しい。

 アニカをおんぶしてなければギュッて抱き締めてやるのに。

 なのでアトモス号に乗り込んだとき、膝に座らせてギュッてしてやった。

 ……鈴ちゃんがブリッジに直接入るのは初めてじゃないか?

 水槽の中から見るのとは景色が違うんだろうな。

 アニカは自分の席にしがみ付いて立っている。

 座り心地のいい座席ではあるけど、ソファーみたいに柔らかくはないからな。

 仮にそうだったとしても、多分それでも痛いんだろうな。

 デイビーは普通に座っているから、アニカよりは尻の皮が厚いんだろう。

 ナームコに至ってはブリッジの真ん中に立ってなにやら呪文を詠唱していた……ようにしか見えなかった。

 あれで船を動かせるのか。

 しかも船が動いてもフラつくようなこともない。

 と言っても、俺たちも船が動いたところで加速Gも横Gもなにも感じないんだけどさ。

 重力制御装置(GCデバイス)は偉大だ。

 しかし鈴ちゃんが水槽に入っていないのに本当に動いたぞ。

 確かに今までもハッチが開いたり、明かりが点いたりしてはいた。

 でも船が動くなんて思ってもみなかったぞ。


 牧場の人の後を付いて、アトモス号を畑へと移動させた。

 ただ、どう見ても逃げる人を追いかけているようにしか感じられなかった。

 相手は徒歩に対してこっちは宇宙船。

 なんか、ごめんなさい。

 収穫後だと言っていたとおり、ただの空き地になっている。

 なにが植えられていたんだろう。

 あっちには多分麦かな。

 こっちはトウモロコシ?

 キャベツに……なんか葉っぱも生えている。

 全部手作業なのかな。

 大型機械とかあるのかな。

 手作業だとしたら、一体何日かかるんだろう。

 絶対やりたくない。

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