第198話 裏切り者?
「ナユダさん……どうしてここに」
「お願い。魔神王様を殺さないで」
「魔神からの解放を願っていたはずです。それが今叶うところなんですよ。そこをどいて下さい」
「外がどんなところか知らなければ……ね。私はもう解放なんて望んでないわ」
「みんなのことはどうするんですか」
「……もう貴方には関係の無いことよ。帰って下さい」
「帰れって……」
「貴方方はアニカさんさえ連れ帰れればいいんでしょ。さっさと連れて帰って。もう干渉しないで。放っておいて……」
「僕たちの都市なら魔神なんて居なくても生きていけます」
「何度も言わせないで。私たちには無理よ」
「そんなことはありません。そこをどいて下さい」
「嫌よ!」
「ふっふっふっふっふぁっふぁっふぁっふぁっ。ナユダよ、よくやった。褒美をやろう」
「ありがとうごさいます」
褒美? まさか、進化の儀!
「ナユダさん、危ない! こっちへ来て」
「いやっ!」
腕を取って強引に引き寄せようとしたけど抵抗されてしまった。
このままじゃ!
「このままだと進化の儀を強制的に受けさせられてしまいますよ」
……と思ったけど、魔神王も動こうとしない?
「離して! 進化の儀なんて受けないわよ」
「ですから強制的に受けることになるってことです。魔神になるのは嫌って言っていたじゃないですか」
「そうよ。だから大丈夫なの!」
「どういうことですか」
「褒美っていうのが進化の儀を受けなくすることだからよっ」
「受けなくすること? どうしてそれが褒美になるんですか」
「どうでもいいじゃないっ。とにかく私が進化の儀を受けることはないの。だから離してっ」
意味が分からない。
どうしてそれが褒美になるんだ?
ここの人たちにとって進化の儀を受けることこそ褒美なんだろ。
その逆が褒美って……いや、問題はそこじゃない。
「どうして進化の儀を受けなくすることが褒美だって言えるんですか?」
「そういう約束だからよ」
「約束? 魔神王と約束しているってこと?」
「そうよ。私への褒美は進化の儀を受けなくて済む期間の延長なの。だから――」
「ナユダ、それはどういう意味だ」
「ファスト?! どうしてここに」
確か初めて隠れ家に連れていかれたときに居た人だ。
どうしてここにいるんだ?
「話は聞かせてもらったわよ」
「きっちり説明してもらおうか」
「ロナシー! フォース! 説明って……なんのこと……かな」
「とぼけるな!」
「進化の儀を受けなくて済む期間ってなに?」
「そ、それは……そのままの意味よっ!」
開き直るの早いな。
「どうして魔神王からの褒美が進化の儀を受けないことなの? 普通逆よね」
「う……」
「言えないのか?」
「いいでしょなんだって。貴方方もそのお陰で進化の儀を受けずに済んでるんだからっ! 感謝してほしいくらいだわ」
「なに?」
「どういう意味だ」
「だからそのままの意味よ。他に無いでしょ」
レジスタンスの人たちも知らないこと?
というか、レジスタンスの人たちも進化の儀に選ばれない?
今までも?
つまり今までも褒美として選ばれないようになっていた。
褒美ってなんの褒美?
魔神王にとって利益となること……だよな。
それって……
「ナユダさんが魔神側のスパイだったってこと?」
ということが答えなのか?
「スパイ?」
「私たちを魔神王に売っていたのか!」
「違う! そんなことしてない」
「今までも褒美を貰うようななにかをしていたんですよね。なにをして褒美を貰っていたんですか」
「う…………」
「言えないようなことをしていたんですか」
「そんなこと……魔神王様に楯突く魔神を殺していただけよ」
「魔神を……」
「それじゃあ今まで魔神を殺していたのは」
「全部魔神王様の指示よ」
「だからナユダの持ってきた情報は正確だったのか」
なるほどね。
そりゃ情報が正確になるのも頷ける。
「だとしたらおかしいだろ。成功したことの方が少ないんだぞ」
「そうよ。魔物に襲われなくて中止になったことの方が多いのよ」
「それも含めてなの」
「どういうことだ」
「知らないわよ。そもそも魔物だって魔神王様が操ってるんだもの。だから襲われなかったときも指示のうちなのよ」
「……なんだと?」
「つまりナユダが死ななかったのは運が良かったんじゃないんだな」
「ニーエが死んだのは仕組まれてたってことなのね!」
マジか。
そういえば魔物が現れたときに外部から干渉する魔力があるとかデイビーが言っていたな。
それが魔神王だったってことか。
次回、3度目がある




