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第196話 選手交代

 やっぱり火鳥(カタヨク)は強いな。

 鎌鼬(ワールウィンド)たちが弱いとは思わないけど、それでもやっぱり格の違いが分かる。

 全力が出せないのに魔神(まがみ)王様と互角以上に戦ってる。

 魔神(まがみ)王様も負けてない。

 火鳥(カタヨク)の攻撃を杖で防ぎながら詠唱魔法を撃ってきてる。

 あんなに魔法を使って魔力が枯渇しないのかな。

 魔神(まがみ)は魔人だから魔力を蓄えられても新たに作り出すことが出来ないはずだよね。

 そんなに沢山蓄えてたってことなのかな。


(どうじゃろな。この器にそれ程の魔力が蓄えられるとは思えぬのう)


 そうなのかい?

 じゃあどういうことなんだろう。


(ふむ。新たに作り出しておるのじゃろうて)


 でも魔人は作ることが出来ないから取り込んで溜め込むんだよね。


(そうじゃの。あくまで取り込んでおるということなら今ここに漂っておる魔力を取り込んでおるのじゃろうて)


 それって魔法として使われた魔力が消滅する前に取り込んでるってこと?

 だとしたら取り込むのが凄く早いね。


(彼奴は詠唱魔法を使っておるでの。それにそれだけではないかもしれん)


 ふーん。じゃあ魔力枯渇は無いってこと?


(かもしれんの。しかし……ふむ)


 どうしたの?


(いやなに。アニカ様は随分と強くなられたの)


 そうかい?

 自分じゃよく分からないよ。


(好ましいことではないが受け止める力がかなりついたようじゃの)


 本当かい?

 だったら……


(じゃからとゆうて、それを良しとしてはならん。ゆうなれば、悪い方へ強くなってしもうたのじゃからのお)


 う…………


「むう、小バエがブンブンとしつこいのお」

「ほっ、小僧はよく吠えるの」

「千年生きたワシを小僧とな」

「ふぁっふぁっふぁっ。一昔前の話をされてものお」

「ふっ。その割におぬしは小さいのお」

「身体が大きけりゃよいとゆうものでもなかろう」

「しかし身体にそぐわぬ魔力を持っておるの。さすがは精霊……といったところか」

「それはアニカ様のお陰じゃな。じゃからおぬしのような小僧が寄ってきおる。まったく、困ったもんじゃ」

「それはおぬしとて同じなのではないかの」

「ふぁっふぁっふぁっふぁっ。否定はせぬ。が、あくまでそれはついでじゃ。アニカ様がワシらに好かれておるのは別の理由じゃ」

「それは両目のことかの」

「逆じゃ。ワシらに好かれた結果の両目じゃて」

「ふむ。それは興味深いところだの。出来れば詳しく知りたいところではある」

「話してもよいが、1日では終わらぬぞ」

「では、後日改めて願おうかの」

「ほっ。後日があると思うておる」

「アニカ殿を取り込んだら直ぐにでも構わぬぞ」

「出来ると思うておるのか」

「そうだの。ちと本気を出すとするか。ケロイチイチ レロウ ハンシモウチモエナラ ワモヤ、レモモヤ、モ、ワエモ ナエモチモヤ、エラナ ムレラ ワモヤ、ムノハンマヤ、シウワ……」


(ぬ? 詠唱が変わったの)

(あれは古代魔術よ)

(ほう。古代とな)

(あんた知らないの? 1500年前に失われた詠唱魔術よ)

(ほっほ。ではその前はなんであるかの)

(あれは神代(しんだい)魔術。原初魔術とも言ったかしら。全ての魔術の原点よ)

(ふむ。鎌鼬(ワールウィンド)はよう知っとるのお)

(なんであんたが知らないのよ!)

(ワシゃここでは新参じゃからの)

(はあ?)

(しかし詠唱しながらワシの攻撃を躱すとは、器用じゃの)

(感心してる場合じゃないでしょ!)


「ナロノモウワモ チレムイチイチモウ、サンロハンマモウワモラ サンムララモヤ、、ナロラモウワモヤ、サンエウワ、チヤ、シハンコカナノムヤ、モヤ、 ノロワモウ……」

「む、まずいの。これほどの魔力を練られるとちと厳しいの。アニカ様の限界も近いようじゃし……困ったのお」

「ふぉっふぉっ。困ることはない。ワシに身を委ねるのだ。さすれば解決しよう」

「いや、丁度よい。ワシは還るとするかの」

「ちょっ、ボケジジイ! (あるじ)を放って逃げるつもりっ」

「ワシらの出番はここまでじゃて。後は任せておけばよい」

「はあ? あんたなに言って、コラ! 逃げるな!!」

「ふむ、まぁよい。これで邪魔者は居なくなった」

「まだよ。まだあたしが居るわ!」

「無駄な足掻きを。エハンコカ サンモヤ、ワモ イチモエウモ チナム゛ヤ、ケモ サンモヤ、ワモウ ワモウ ウムヤ、ヤ、モウ ワモウ チモハンマモウ ワモラ ナロワモラ ハンマモノモウ……」

魔神(まがみ)王!」

「ぬ?」

「モナカくん!」

「残るはお前だけだ!」

次回、いよいよ決着?!

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