第193話 ひとつ上
うは! 今度は火球が飛んできたぞ。
火矢ほどじゃないけど容赦なく降り注いでるなー。
「ひぃ、こんなの……捌き切れな……イヤーっ!」
「ナインティー!」
うわ……黒焦げだ。
携帯から携帯に機種変更しただけでここまで火力が上がるのか。
多分1発1発は変わってないんだろうけど、数が……ね。
「この女!」
「だからお前の相手は俺たちだって言っているだろ」
「このっ!」
「マスター、交代だよ」
「交代?」
「モナカ!」
タイムがサッと消えて左手が寂しくなるも、1秒も経たずにギュッと懐かしい感覚に陥った。
懐かしいというには短い時間だが、そう思えるくらいには長い時間だった。
タイムとは違う慣れ親しんだ時子のこの感触に安心さえ感じてしまう。
「連射は終わりか?」
「携帯が壊れるところだった」
「いきなりかよ」
「あははは。だからいつもどおり行きましょ」
「ああ」
「女ぁ!」
魔力弾だ。
魔神も魔人同様使えるのか。
「タップ……あれ?」
「火壁はその上のアイコンだよ」
「あははは、間違えちゃった。携帯って持ちにくーい!」
……慣れないうちは仕方ないか。
どっちにしても魔力弾を防いだことに変わりはない。
「はぁぁぁっ!」
土壁を殴って砕いたのか。
これは魔神が強いってことだよな。
でもビビってなんかいられない。
『行くぞ!』
『あ、時子。携帯と違って小太刀との持ち替えはできないから気をつけて』
『え?』
『……あ』
なんか今なにかを落としたような音が聞こえたぞ。
『先に言ってよ!』
『ごめんごめん』
『ストップストップ! 携帯落とした!』
『なにやってんだよ』
初撃を受けさせて時子に斬り込んでもらおうと思ったのに。
まずい! 時子が止まったから踏み込めない。
力負けする……ぐっ。
「うあっ!」
「きゃあ!」
弾き飛ばされちまった。
体制は崩れたけど、追撃はしっかりと対応できたぞ。
とはいえ防戦一方で思うように動けない。
携帯は……チビタイムが拾いに行ったのか。
『時子、拾ってきたよ』
『ありがとう』
『よし、反撃だ』
『ええ。タップ……あ』
『火矢はその上!』
『ひぃーん!』
『慣れるまで見て押しなさいっ』
『うう……』
間違えたらしいけど効いているから問題ない。
ここからは全部俺たちのターンだ!
次回、魔神戦終了のお知らせ




