第191話 フレンドリーファイヤー
案の定アプリがなにも使えない。
それどころかまだ効果時間中のアプリも効果が無くなっている。
勿論パッシブアプリも……
つまり素の状態、本来の俺の強さだけになっている。
幸いなのが黒埜は消えずに残っているということくらいだ。
どれだけ基礎能力を鍛えてきたかが試されるってことか。
反応が鈍くなっているから早めに防御しないと間に合わない。
が、それができないくらいに身体能力が落ちている。
多分この状態なら1発食らっただけで戦闘不能になれる自信がある。
幸い逆に右手の制御も上手くできなくなっているから力負けだけはしない。
正に左手は添えるだけになってしまった。
力任せに黒埜を振るうだけで相手の防御を崩すことができる。
あまりしたくはないんだがこの際黒埜には我慢してもらおう。
「このくらいなら大丈夫だよ」
「ごめんな。これじゃ刀というより棍棒だ」
「そんなことないよ。一緒に生き延びよう」
「ああ」
軽く振っているつもりなのに勢い余って地面までえぐってしまう。
痛いだろうに、大丈夫なんて無理しちゃって。
もう少し軽くしなきゃ。
それにこれ、完全に自爆技だ。
気をつけないと弾け飛んだ地面で俺が死ぬ。
カブト割りは止めておこう。
「なんなのあの武器は」
「さあね。でもそれだけ気をつけていれば問題ないわ」
くそ。右手に振り回されて身体がフラフラする。
身体がついてくればなんとかなるんだが……
幸いなことに魔神たちも攻めあぐねているようだ。
なんとか持ちこたえられ、痛っ。
なんだ、右腕に違和感が……というか、感覚が薄れている?
痺れるような感じも……
ナースが反応しないから問題ない?
とりあえずこれ以上は止めた方がよさそうだ。
左手だけでなんとか……
「ん? 急に勢いがなくなったぞ」
「そうね。よし」
「あ、待て! 誘いかも知れないぞ」
「はぁぁぁぁっ!」
ぐ……ダメだ、力負けするっ。
しかも右腕がうずき始めやがった。
心臓の鼓動に合わせて脈打ってやがる。
思ったように動かない。
本格的にヤバいかも。
「トドメだ!」
右腕、動いてくれ!
「火球!」
「なに?!」
「きゃあ!」
「あっちぃ!」
「コラ! マスターにも効果あるんだから気をつけてよね」
「え?! だってモナカと私には攻撃魔法の効果が無かったんじゃないの」
「パーティ組む前なんだから当たり前でしょ。さっき説明したよね」
「携帯の時はそんな面倒無かったのにな」
「代わりにアニカさんとか鈴ちゃんにも効果があったよね。でもパーティ登録すれば攻撃魔法の範囲外になるって説明したはずだけど……」
「そうだったっけ。あはははは」
「笑って誤魔化すな」
「う、ごめん。モナカ、怪我しなかった?」
「タイム、時子! 携帯壊されたんじゃなかったのか」
「機種変更したの」
「機種変更?!」
「先輩の携帯に……ね」
そういうことか。
だからタイムが持っていったのか。
「勝手に機種変更に使ってごめんなさい」
「いいって。どうせ元々俺のじゃなかったんだし。先輩の……だっけ。あーそれはそれで問題があるのか」
「大丈夫だよ。時子が使うなら先輩も貸してくれるよ」
「ふっ、そうだな」
「それじゃ行くよ。先生は時子のこと、よろしくね」
「わかりました」
「その前にナース、右手を……あれ?」
さっきまでおかしくなっていたはずなのに、元に戻っている?
「応急処置はしたわ。でも後でナームコさんに見てもらいましょう」
「分かった」
ナースの専門外なのか。
確かに右腕がこうなった原因はナームコだからな。
「よし、反撃開始だ」
次回、貴方は敏感? それとも鈍感?




