第185話 魔神騎士
『時子、待てって』
『来ないでっ!』
『おい……』
まったく、拗ねている場合じゃないのに。
そりゃタイムのことは心配だけど……一人にできるかよ。
『[短縮2番]。出でよ、小野小太刀』
あー携帯と小太刀の二刀流始めちゃったよ。
仕方ない。1人ずつ相手に……って、俺無視されていないか?
時子の方に2人とも行ってやがる。
お陰で背中がガラ空きだぜ。
斬ってくれと言っているようなもんだろ。
一気に行くぜ!
「おっと、貴方の相手は私よ」
「アルバトロスさん!」
「ん? 名乗った覚えはないんだがな」
「ワンさんがそう呼んでいたと思ったんだけど、違ったかな」
「いや、あってるさ。私は貴方の名前を知らないけどね」
「モナカです」
「聞いたわけじゃない。覚える意味も無い。どうせ直ぐ死ぬんだからな」
「貴方がですか」
「はっ、言うじゃないか。やっぱりあのとき駆除しなくて正解だったな。少し楽しめそうだ。私はワンやドライバーのように優しくないぞ」
「俺も急いでいるんで優しくできませんよ」
「だったら魔物より楽しませてくれよ。はっ!」
おっと。ふーん、確かに言うだけのことはあるけど、デニスさんと比べたら月とすっぽんだな。
あのエイルに名前を忘れられた魔人の方が強いかも。
それが証拠に、ふんっ!
「なにっ! 爪が……」
「あれ。全部斬り落とすつもりだったのに3本か……まだまだだな」
「少しはやるじゃない」
「どうも」
この調子で一気に――
「ただいまっ!」
「うわっ」
「なっ!」
「タイム!」
「ってマスターなにやってんの。時子はどうしたの」
「いや……それが……」
「とにかくこの2人を片付けよ」
「あ? なんだと。この死に損ないがっ」
「ああこれ?」
タイムの見た目は傷だらけで大量出血状態。
いやいやいや、それ普通の人間なら既に死んでいるからな。
いくらなんでもやり過ぎだ。
「癒やしの風!」
「な……傷が治っただと?!」
という見た目から完璧な健康体になったら驚くどころじゃないよな。
したたった血溜まりすら消えるとか……どんな魔法だよ。
……と見えるように演出を掛けただけ。
種を知っていてもさすがにちょっと引くレベルだ。。
「知ってる? 魔法騎士は巨大ロボに乗るものなんだよ」
「キョダイロボ? なんだそれは」
「魔神召喚!」
うおっ、タイムを中心にチビタイムたちがまた出てきたぞ。
「レッドナイト、カモン!」
「ブルーナイト、カモン!」
「グリーンナイト、カモン!」
「ブラウンナイト、カモン!」
「ホワイトナイト、カモン!」
「ブラックナイト、カモン!」
「な、なんだこれは?!」
6つの魔法陣が現れたかと思ったら6体の等身大ロボットが魔法陣から出てきた。
デザインは同じだけど赤・青・緑・茶・白・黒のカラーリングだ。
でも巨大ロボというには小さくないか?
チビたちには十分大きいけど。
6人とも現れたロボットに乗り込んでいくぞ。
「6魔神合体!」
合体?!
おお、なんか変形し始めたぞ。
なるほど、両手両足に胸と腰か。
すげー、電磁誘導で合体し始めたぞ。
ガチャリガチャリと派手な音を立ててそれっぽい。
あれ? でも頭が無いな。
胸からパッと光が差してタイムを包んだかと思ったら吸い込まれていった。
すると頭がジャキーンと光と共に出てきたぞ。
うは……巨大かといわれれば小ぶりだけど5メートルくらいはあるか。
人と比べたら十分巨大だ。
「降臨、魔神騎士!」
「あ、あり得ない。なんなんだよこいつ!」
「巨神拳!」
「ひっ、う、うわぁぁぁっ!」
うわ、えげつな。
ただのパンチにしか見えないのに、一撃でペチャンコかよ。
いや、そんなことより。
『タイム、こんなデカいの召喚してバッテリーは大丈夫なのか』
『ん? これただの立体映像で実体なんか無いからあんまり使わないよ』
『いやいや、そんなわけないだろ。現に魔神がペチャンコなんだから』
『ぶつかる瞬間に結界を張ってそれっぽく誤魔化してるだけだよ』
ハリボテより酷いな。
でもチャンスだ。アルバトロスさんが腰を抜かして倒れ込んでいる。
ちょっと気が引けるけど情けを掛けている余裕は無い。
後ろから近づいて黒埜を振り下ろすと簡単に斬り倒すことができた。
『マスター、怪我は無い?』
『大丈夫だよ。それより魔神騎士の出番はもう終わりなのか?』
『それが……実体化よりは省電力なんだけど、バッテリー容量と比べたら……ね。やっぱり大きすぎたみたい。あははははは』
それって実体化だったらそれだけで空になっていたってことなのか。
『そっか』
「きゃーっ!」
時子の悲鳴?!
しまった、手間取って1人にしすぎた。
次回、シロノエレモ アカロウモ ノヤ、モムケラ




