第180話 完璧な身体?
なんとか形になったかな。
これでアトモス号も任せられる。
鈴ちゃんの負担も少なくなる。
きゃっ、なに?!
クラッカー?
ルイエ……じゃないよね。
こんなことができるのは……
〝おめでとう! いやー長かったね。でもこれで漸くキミに身体を与えることができる〟
「出たな、天の声!」
〝出たなって……出ちゃ悪いかい?〟
「今忙しいの。天の声に付き合ってる暇なんて無いよ」
〝大丈夫。今他の空間は止まってるから。動いてるのは僕たちだけさ〟
「時間停止してるってこと?」
〝似てるけど別物だよ〟
「あっそ。それで? 要件はなに?」
〝おいおい、さっきも言っただろ。キミとの約束を果たしに来たのさ〟
「約束?」
〝そう。受肉の約束さ〟
「えっ!」
〝クーヤと融合した携帯のアップグレード。そしてクーヤが持っている携帯との完全同期。その両方が完了したのは前に言ったね〟
「うん」
〝そして今、ルイエが成長したことによってキミが居なくなった後のクーヤのサポートができる存在が誕生した。これでキミは気兼ねなく受肉することが出来るようになった〟
「ホント?!」
〝僕は嘘を吐かない。それじゃ早速始めようか〟
「えっ、今?!」
〝なにか問題でも?〟
「今はちょっと……落ち着いてからでもいい?」
〝それは構わないが……〟
「あっそうだ! その前にタイムの身体を見せてよ」
〝そうだな。ほら、これだ。服は自分で用意してもらうことになるが、完璧だろ〟
「……完璧? これの何処が完璧?」
〝なんだ。不満なのか? 姿形は今のままだろ。その身体と違ってちゃんと中身もあるし機能もしてる。お望みのクーヤの子供だって産めるぞ〟
「胸が小さいままなんだけど……」
〝そりゃそうだろ。キミの写し絵なんだから〟
「タイムは元々もっとあったもんっ!」
〝あーそういう意味か〟
「他にどんな意味があるってのよ。作り直しを要求しますっ!」
〝でもそうするとクーヤがキミをキミと認識しなくなるぞ。本来の姿……それはつまり時子と同じ姿形ということだろ。それはもうキミではなく時子だ〟
「そんなことないもん。タイムはタイムだよっ」
〝タイムで居たいならこの身体で納得しなさい〟
「だったら元より大きくしてもいいんじゃない? 時子と違うならいいんでしょ。そうよ、そうしましょ」
〝そういう話じゃないんだが……しかしそうなると数年かかるぞ〟
「なんでよ! ちょちょっと盛るだけでしょ」
〝偽乳でいいならちょちょいで終わるが、いいのか?〟
「偽乳?!」
〝粘土細工じゃないんだ。そんな簡単に大きくできるわけないだろ。本来の大きさにするのも数ヶ月掛かるからな〟
「う……数ヶ月くらいなら……まぁ」
〝だからそれは……まぁいっか。それでいいならその分仕事をしてもらおうか〟
「仕事?!」
〝当然だ。対価分働いてもらうぞ〟
「本来の大きさにするだけなのに?」
〝キミの本来の大きさがこの姿なんだが〟
「納得できない! なんでタイムだけ……」
〝恨むんならあんな願いをした自分を恨むんだな〟
「むぅ……分かったよぅ」
〝ったく。ホント世話しか掛からない子だ〟
「ん、なに?」
〝アホの子の相手は疲れるって言ったんだ〟
「タイム、アホの子じゃないよっ!」
次回、おおかみ登場




