第177話 やけっぱちの2度目
まさか石人形に鈴が乗っているとは思わなかった。
『時子は気づいていたのか』
『ええ』
『そっか……さっさと片付けて鈴を迎えに行こう』
『分かってる』
てことで魔神と2対2の戦闘開始だ。
2対4じゃないのはタイムがデコイを残していったからだ。
これで数的不利は解消された。
デコイといってもデコイだから意思がある。
ちゃんと動くし反応もしている。でも……
「なんだよ。歯ごたえないわね」
「この程度なら私1人で十分だ。貴方はあっちを手伝ってくれ」
反応は遅いし動きも遅いで戦闘能力なんて皆無。
あれじゃサンドバッグじゃないか。
『またなの! こっちに集中して』
『だってタイムが。ああっ、血が!』
『ただの演出でしょ』
『そうだけど……』
分かってても嫌なものは嫌なんだ。
「なにをしている。さっさと行け」
「くっ。この女、邪魔なんだよっ」
『タイム!』
『いい加減にして。ああやって引きつけるために演技してるんでしょ』
『分かっているよ。分かっているけど……』
「よそ見してる暇なんてあるのかしら」
「暇なんて無いけど……」
「モナカ、なにバカ正直に答えてるのよ」
「へ? うわっ」
そうだ、集中しなきゃ。
でも魔神たち、2人になった途端連携が上手くなっていないか?
そういえばワンさんもドライバーさんと2人で巡回していたんだっけ。
慣れた2人だから?
ならタイムの方も?
いやだから目の前の敵に集中しないと。
「この2人、手なんか繋いで余裕そうね」
「そういえばいつも繋いでるって報告があったわ」
「繋いでることに意味があるのかしら」
「ワンを殺したときは離していたわ」
「今が本来の姿なの?」
「どっちにしてもあの男が邪魔だわ」
「あの男の所為で近づけないのよね」
「なんとか離れさせられないかしら」
「さっきから小さい方を気にしてるみたいだから利用できないかしら」
「そうね。やってみましょう」
「そんなに心配ならお姉ちゃんのとこに行けば」
「いきなりなにを、ッ!」
「なっ。また繁栄の儀を始めたぞ」
「外の人間は節操がないな」
時子はなにを考えているんだ。
「これでお姉ちゃんのところに行けるでしょ。バカッ」
「ちょっ、時子!」
「しめた。労せず二手に分かれたぞ」
1人で突っ走ってどうするんだ!
次回、更なる良い声




