第176話 死亡フラグをもみ消して安全策をとろう
まずいな。魔神たちが少しずつ連携を取り始めたぞ。
でもだからこそ行動が読みやすくなっている部分もある。
今のうちに1人でも多く叩いておきたいところだ。
『マスター、ドライバーさんを狙おう。1人前に出すぎで動きも一番単調になってる』
『ワンさんの敵を取ることに夢中で周りが見えていないのかな』
『だと思う』
『よし、俺とタイムでドライバーさんを殺るから、時子は他の魔神を攪乱してくれ』
『……ぷぅ』
えー、なんで膨れてるの。
『マスター、攪乱はタイムがやるから時子とドライバーさんをお願い』
『いや、それだと』
『いいよ。お姉ちゃんが攪乱に回るとバッテリーの消費が大きくなるもんね。それは分かってる。分かってるけど……』
『けど?』
『……ぷいっ』
『おい……』
まいったな。どうすりゃいいんだ。
『分かった。マスター、行くよ』
『あ、ああ』
とにかく今は魔神に、ドライバーさんに集中だ。
でも動きは単調だし、俺の方が黒埜の分リーチは長い。
邪魔が入らなければ割と苦は無いはず。
「[鏡像騎士]。はぁぁぁっ!」
「なに?!」
うおっ、時子の分身か?
分身を連れて時子が突っ込んで行きやがった。
なるほど、鏡像ね。分身は動きが左右逆だ。
自動人形ではないのな。
「[短縮2番]!」
すげー、分身も携帯を使えるのか。
違う。魔法すらミラー対象なんだ。
これで邪魔は入らない。
『NotesSaber起動する?』
『必要無い』
でも起動できるってことはもう情報収集終わっているのか。
とにかくこの程度の相手ならアプリ無しで勝てるようにならなきゃ。
ちょっと黒埜には無理をさせるけど。
『無理じゃないよ』
『そっか。なら遠慮せず行く……ん?』
『どうしたの?』
『いや、なんでも』
タイム……の声じゃないんだよな。
もしかして今までのも全部黒埜……なのか?
考えるのは後だ。
「蔦絡み!」
「ぐっ、こんな蔦何処から! くそっ」
「覚悟!」
「ぬぉぉぉぉっ」
右手の力を少し解放して一気に斬り付ける!
「ぐはぁ……く……ワン……すまない」
よし、これであと4人。
この調子で1人ずつ――
〝パパーッ〟
?! 今鈴ちゃんの声が聞こえたような……
いや、アトモス号の中に居るはずだ。
あの中にいる限り安全なはず。
そういえば石人形が2体出てたよな。
大きいのと小さいの。
まさか小さい方に鈴ちゃんが…………
『マスター、今度は時子とやって』
『なんでだ?』
『思ったよりルイエが大変でさ。少し厳しいの。そっちに集中したいかなって』
『ルイエ?』
『ナームコさんの石人形の制御をしてるの』
『なんでそんなことを……鈴ちゃんが制御してるんじゃないのか?』
『守君はね。ルイエは攻君の方』
『……やっぱり鈴ちゃんが石人形に乗っているんだな』
『あ……うん』
『なんで言わなかった。鈴は無事なんだろうな』
『大丈夫だよ。ルイエが慣れてないだけだから。それにフブキさんも加わったから』
魔獣を倒したのか。
やっぱりフブキは強いな。
『タイム、こっちはいいから鈴を助けてやってくれ』
『いいの?』
『本当は俺が行ければいいんだけど、俺の……俺たちの代わりに鈴を頼む』
『分かった』
「くそっ」
「小さい方が邪魔だな」
「そうね」
「……は?」
『待てタイム! 小さいのは身長! 身長だよ』
『時子と同じ!』
どうしてお前らは自分で死亡フラグを立てたがるんだよ。
こんなことしている場合じゃないのに。
タイム……
「俺とアルバトロスで小さい方。ナインティーとスプーンは大きい方だ」
「……ま、いいでしょ」
大きい方……はっ!
『タイムは俺より背が低……小さいだろ。ほら、大きい方は俺だし』
『…………』
『また私とモナカをキスさせたいの?』
それを言うか。
『う……』
『タイム、こいつらは俺がきっちりお仕置きしておくから』
『お仕置きって、やっぱり』
『いいから早く行け!』
もータイムには困ったもんだ。
鈴、無事でいろよ。
次回、我慢の限界




