第174話 少し本気を出しましょう
「わうぅぅぅぅぅぅぅぅっ」
「なにっ!」
「フブキ様っ」
間一髪、フブキ様のお陰でスズ様が助かりました。
しかしフブキ様の冷凍攻撃を受けてもダボ様は片腕が凍っただけですね。
ですが漸くダメージらしいダメージを与えられました。
なんとかなるかも知れません。
「ふっ、まさか神獣達が全滅したというのかしら。まったく、やってられないわっ。ふんっ」
そんな……気合い一つで腕の氷を吹き飛ばしたのですか。
フブキ様でもダメージを与えられないなんて……強い。
「結界に注意しなさい。囲まれさえしなければこいつは雑魚よ」
「ぶもっ!」
「うーっ、わうぅぅぅっ!」
「ふんっ! はぁっ!」
「ぶもーっ!」
なんとか持ちこたえたようですが、危険なことに違いはありません。
やはり一度戻って戦力を整えておかなくてはならなかったのです。
『デイビー様、少々お一人でお相手してほしいのでございます』
『なにか策があるのですか』
『策と言うほどではございませんが、時間稼ぎにはなるのでございます』
今更時間稼ぎをしてどうなるというのでしょう。
『仕方ありません。その代わりなんとかして下さい』
〝フブキ様、そちらはお任せしたのでございます〟
「わうっ!」
『娘、第2形態だ』
『了解。第2形態へ移行します』
『ナームコさん!』
『申し訳ございません。もう限界なのでございます』
第2形態?
っと、気にしている場合ではありませんね。
少し本気で行きますか。
「行かせませんっ」
「はっ、私を止められるかな」
「そうですね。2本では足りなさそうなので更に無理をしましょう」
片手に2本ずつ、合計4本でどうでしょうか。
「っはっはー、そんな大道芸でどうにかなるとでも思ってるのか」
「なんとかするんですよ。はっ!」
これをやると凄く疲れるんですよね。
なにしろ魔法道具4本に魔力を通さなければなりませんから。
それに手数こそ増えますが、1本1本の火力は変わりません。
むしろ気を抜くと下がるくらいです。
僕もレイモンドほど器用ならよかったのですが……無いものをねだっても仕方ありません。
『娘、生きているな』
『はい』
『よし、ラソロケシアシアシウウチムケエ』
翻訳されていませんね。
錬金の呪文でしょうか。
っと、余所見している場合ではありません。
『ナモウシテロケシアシチモケエナモケエ。ナモウシテロケシチムケエナエ』
「なんなんだ。掴んでもつかめねぇのはどういうことだ」
「ふふっ。掴んだところで無駄ですよ」
魔力をカットすれば火鞭は消えるんですから。
先程は力負けで不意を突かれましたが、捕まれることを前提にしていれば問題ありません。
「ちっ、鬱陶しいんじゃあ! だりゃあーっ」
「行かせません。火鞭壁」
「しゃらくせぇ!」
鞭の先端を地面に突き刺すことで力不足を補えますが、火鞭の硬度を保つのに魔力をかなり奪われますね。
突進を受け止め切れていますが……
「うらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
少しずつ押されていますね。
ナームコ様、まだですか。
……もしかしてあれが第2形態というものなのですか。
ナームコ様の背中にスズ様がしがみ付いているだけのような……
いえ、独立していた魔力の流れが1つになっています。
これが奥の手なのでしょうか。
次回、先生と生徒




