第169話 精霊の頑張り
みんな、気を抜かないでね。
相手はまかりなりにも王様なんだから。
(分かってるわよ。ま、あたしと比べたらただのジジイだけどね)
(おじいちゃーん)
(お年寄り!)
(大切にしなきゃー)
(ちょっと! 敵なんだからいいのよっ)
(敵ー?)
(敵怖ーい)
(逃げなきゃー!)
(逃げないのっ! 龍魚は攪乱しててよ)
(カクランカクラン)
(カクランってなにー?)
(あーもー!)
っははは。龍魚はおじいさんと遊んであげて。
(おじいちゃん!)
〝遊ぼ遊ぼ〟
〝なにして遊ぶ?〟
「なんだおぬしたちは。ええい邪魔だ。のけいっ!」
泥猪は防御に徹しようか。
(ワカッタ)
火蜥蜴と鎌鼬は魔神王様を攻撃して下さい。
(ぐるるるる……)
(う、それはちょっと……)
あー、お願いの仕方がマズかったかな。
もう大丈夫だと思ったんだけど。
(ふぉっふぉっ。まだまだじゃのう)
火鳥! そっちは大丈夫なの?
(小童に後れを取るほど耄碌しとらんわい。鎌鼬や、魔神王を倒さねばおぬしの大事な主様が死んでしまうぞ。それでもよいのか?)
(バカ言わないで。あたしが付いてて主を死なせるわけないでしょ!)
(ぐるぅ!)
(火蜥蜴、行くわよ)
(ぐるるるるっ)
「くっ、こざかしい奴らめ。はっ!」
「遅い遅い。そんな触手が当たるわけないでしょ。ほら火蜥蜴、火の玉よ!」
「ぐるわぁ!」
「ぬぅっ。やるではないか。とぅっ」
「ふふっ、そんなの当たらないよ。風刃!」
「なんと!」
「ぐるわぁ!」
「ちょこざいなっ!」
うわぁ、みんな凄い凄い。
その調子だよ。
(そうなんだけど……)
どうかしたのかい?
(あんなのろまなジジイの攻撃なんか当たんないし、こっちの攻撃は当て放題なんだけど……手応えが全然ないのよ)
そうなのかい?
(よく見てよ主。火球が当たっても火傷1つ付かないし、風刃が当たっても斬り傷1つ付かないわ)
ホントだ。痛がってるだけで殆ど無傷だ。
(殆どじゃなくて完全に無傷なの! なんなの一体。押してるようで押されてるみたい)
やっぱり王様だけあって強いんだね。
ボクは応援しかできないけど、頑張って。
(し、仕方ないわね。もう少しだけ頑張ってあげる。ほら火蜥蜴、火力上げなさいっ!)
「ぐわっ!」
「よし、火柱に合わせて小竜巻!」
「ぬぉっ! ぐぬぬぬぬぬぬっ」
みんな頑張れ!
次回、魔神王の神獣




