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携帯は魔法杖より便利です 第5部 歪な共生  作者: 武部恵☆美
第2章 違いを知るためには
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第16話 穏便に進めたい

 ハッチを開けて外に出る。

 警備兵は武器を構えてはいなかったが、犬と猪が警戒態勢を取っていた。

 手綱(リード)は……付いていないようだ。

 いきなり襲い掛かってくることは無いと思うけど、フブキを見て怖じ気付かない辺り、あの鶏よりは度胸があるらしい。


「貴方方はここでなにをしている。所属は?」


 お? 問題なく翻訳できているのか。

 エイルたちと同じ言語?

 ということは前回のような転移してきた人たちの子孫って訳では無さそうだ。

 というか〝所属〟?


「突然すみません。僕たちはこことは別の結界から来ました」


 異世界人ってことを話すとややこしくなるからな。

 とりあえずこの世界の住民ってことで通しておこう。


「別の結界? 確かに見たことの無い顔ぶれだが……」

「まさか、ここ以外の生き残りなのですか」


 お、意外とあっさり信じてくれたぞ。


「そうなりますね。他にお会いしたことはありませんか」

「いえ、貴方方が初めてです」

「何用で来たんだ?」


 何用……人捜し?

 いや、俺たちが初めてということは、少なくともエイルがここに来ていないということ。

 あるいは単に認識していないだけかも知れない。


「いや、何用でも構わん。歓迎しよう」

「そうですね。初めて私たち以外の生き残りと出会えたんですから。これほどめでたいことはありません」


 お、どうやら戦闘は回避できたみたいだぞ。

 結構筋肉質でムキッとしているから、肉弾戦はしたくない相手だ。


「私はワンだ。相棒はホーリン」

「ワンッ!」


 ホーリンか。可愛いな。

 警戒も解いてくれたみたいだ。

 柴より少し大きいくらいかな。


「私はドライバー。相棒はイチっていいます」

「ブモッ」


 この人は対照的にひょろっとしているぞ。

 俺より少し背が高いか?


「僕は船長のモナカです。彼女はシヴァイヌのフブキ」

「わふっ」

「……」

「時子?」

「はぁ……分かってたけど」

「なにを?」

「私は時子です」


 無視かよ。

 なにを分かっていたっていうんだ?


「2人で来たのか?」

「えーと、5人……ですね」


 とりあえずタイムのことは黙っていよう。


「6人でしょ」

『いや、タイムのことはまだ黙っておこうかと』

『じゃなくて、ナームコさん!』

「ああそうだそうだ。6人だった。っははは」

「仲間を忘れてどうするんだ」

「ですよね。っははは」


 仲間……はぁ。


「しかし……貴方方が乗ってきたものは一体なんですか?」

「飛行船です」


 本当は宇宙船だけど、今は宇宙に行けないからな。


「ヒコウセン?」

「えっと、空を飛ぶ船です」

「これが空を飛ぶのか?」

「信じがたいことです」

「貴方たち、なにをしている!」


 お、あれは犬……じゃなくて狼かな。

 フブキより小柄な狼を連れた女の子がやってきた。


「アルバトロスか。結界の外から来た人間の相手をしていたんだ」


 人間?

 まぁ人間か。

 普通はこういうとき〝人〟って言うと思うんだけど。

 気にしすぎか。


「外の人間?! 彼らがか」

「ああ」

「ふぅーん」

「ど、どうも」


 なめるように遠慮なく上から下までジロジロと見られている。

 身長とは裏腹に、随分と態度の大きい子だな。

 2人より若いと思うんだけど。

 俺と同い年か少し上くらい?

 時子より下ってことはないだろうけど、背は時子より少し低い。


「で、なんだって?」

「なにがだ?」

「目的だよ。ここに来た目的ぐらい聞いたんだよな」

「いや、まだだ」

「ったく。そんなんでどうするんだ。この方々が駆除対象だったらどうすんだよ。いや、駆除した方が早いか」


 待て!

 雲行きが怪しくなってきたぞ。


「バッ、貴方は大人しくしてろ。まだ判断するのは早い」

「早いに越したことはないだろ。魔物だったらどうする!」


 あ、やっぱり魔物が出るんだ。


「言葉を喋る魔物は居ないだろ」

「新種かも知れんぞ」

「違います! 魔物ではありません。いたって普通の……人間です」


 俺はサイボーグになっちまったけど。


「魔物はみんなそう言うんだよ」


 喋る魔物は居ないんじゃなかったのか。


「とにかくやめろ! 判断はあいつに委ねるんだ」

「チッ。あいつにか」

「貴方方、〝あいつ〟ではなく〝王〟ですよ。彼らの前でくらい()めなさい」

「やべっ」

「ケッ、ビビってんじゃねぇよ」

「おいチクんなよ」


 なんだなんだ。

 あまり慕われていない王様なのか。

 というか、村長(むらおさ)とか市長じゃなくて、王様なのか。

 エイルたちのところは……実質予言者がトップだと思う。

 大統領とか総理大臣とか、この世界に選挙はないのか。


「誰も言いませんよ。ですね、人間」


 こっちに振るな。

 大体この流れで〝話す〟とか言えないぞ。


「僕はなにも聞いていませんから。っははは」

「……口塞いだ方が早くね?」

()めなさい。全く、これだから……」


 頼むから仕掛けてくるなよ。

 変な動きをしたら、俺がやらなくてもナームコが対人砲を撃ってきそうで怖い。


『ナームコ、大人しくしていろよ』

『これ以上兄様を愚弄するようでございましたら、撃ってもよろしいと存ずるのでございます』

『よろしくないし愚弄もされていない。とにかく大人しくしていろよ。撃ったら簀巻きにして埋めて置いていくぞ』

『兄様?!』


 殺られる前に殺れっていう考えは分かるが、まだ相手に理性的なヤツが居るんだから先に仕掛けるな。

次回、王様のところまで移動します

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