第168話 わんにゃん戦争
「ニャんニャのこのチビ」
「チビじゃにゃいにゃ! タイムは四天王のヌッコにゃ! ただの野良猫とは違うにゃ」
「野良猫ニャんかじゃニャいわよっ。私はニャインティー様の神獣、ホールニャ」
「覚悟するにゃ!」
「ふふっ、覚悟するのは貴方ニョ!」
「にゃにゃにゃにゃにゃ!」
「ニャーニャニャニャニャーニャーニャ!」
むむ、体術は互角みたいにゃ!
にゃらば!
「必殺! 猫じゃらしにゃっ」
「ニャに! そ、そんな手に乗らニャいわニョ!」
「そーれそーれ。我慢しにゃくていいのにゃ」
「う……我慢なんてしてニャいわ。行くニャーっ!」
「ほりゃ」
「ニャっ!」
「ほいっと」
「ニャニャっ!」
「そぉーれ」
「ニャーっ!」
「ふふふ、覚悟するにゃー!」
「しまった。謀ったニャ!」
「にゃー」
「ニャっ」
「にゃにゃっ」
「ニャーニャ」
「にゃっ?!」
「ニャ!」
「にゃんて恐ろしいヤツにゃ。ヌッコまで巻き添えにするとは……あにゃどれん」
「…………ニャッニャッニャッ。計算どおり。今度は私の番ニャ! 食らえっ」
「にゃんだと?!」
口から水を勢いよく吐き出したにゃ!
嫌にゃあ!
「よく避けたニャ。次はどうかニャーーっ!」
「にゃあああああああっ!」
「…………なにをやってるんだわん」
「ふっ、所詮猫ということでしょ」
「全くだわん」
「だが私は彼女のように甘くないわ」
「イッヌだって甘くないわん」
「ふふふっ。あっちの駄犬よりは楽しませてほしいものね」
「フブキさんは駄犬じゃないわん。お前の方が駄犬だわん!」
「犬じゃないわよ。私は狼。氷狼のトライよ」
「タイムは四天王のイッヌだわん」
「ふふっ。ここまで殴り合いは互角みたいだけど、私の冷気に耐えられるかしら」
「冷気? 冷気を操れるのかわん?!」
「氷狼だと言っただろ。記憶力がない人間……貴方本当に人間なの? 赤ん坊並に小さいわよ」
「お望みなら大きくなってやるわんっ!」
といってもあまり大きくなれそうにないわん。
5頭身程度にしておくわん。
「大きくなった?! なんなの貴方は。やっぱり人間じゃないわね」
「イッヌはイッヌだわん。」
「変なヤツ」
「変じゃないわんっ。大体狼のくせに語尾が〝わん〟じゃないのはなんなんだわん!」
「………………は?」
「イヌ科のキャラなら語尾は〝わん〟にするのが普通だわん」
「なんだそれは」
「あっちの猫はニャーニャー言ってるにゃー……わん!」
「〝にゃー〟?」
「うるさいわんっ! 大体お前の冷気は温いわんっ。エアコンでももっと涼しいわん!」
「ふっ、人が手加減してやっていればいい気になりおって。だったらお望みどおり凍ってしまえっ!」
「おー、少し涼しくなったわん」
「やせ我慢は止めておけ」
「やせ我慢じゃないわん。フブキさんの方がもっと寒痛いわんっ! なにするわんっ!」
「あ? そいつが避けるから当たっただけニャ」
「まったく、ヌッコはいつまで水鉄砲相手に遊んでるんだわん」
「水は嫌にゃあ!」
「ミズデッポウ? ニャんかよくわからニャいけどバカにされたようニャ気がするニャ! ニャニャニャニャニャニャーっ!」
「がぶがぶがぶがぶがぶーっ!」
「飲むニャっ! ニャニャニャニャニャニャーッ!」
「がぶがぶがぶがぶがぶーっ!」
「……なんなのよ一体」
「ホントにゃ。大体猫が水っておかしいにゃ」
「そうなのか?」
「猫は水が嫌いなのにゃ。定説なのにゃ」
「彼女はよく水遊びをしていたわよ」
「変わったヤツにゃ」
「全ての猫が嫌いというわけじゃないんじゃない?」
「そうにゃのかにゃー」
「うーん……」
「ニャニャニャニャニャニャーッ!」
「がぶがぶがぶがぶが、うっぷ。飲みすぎたわん。もう飲めないわん。お腹がパンパンだわん」
「ニャーッニャッニャッニャ! トドメニャーっ!」
「うっぷ。お返しするわおーんっ!」
「ニャに?!」
「あ、飲んでた水を吐き出してるにゃ」
「汚いなぁ」
「汚くないにゃっ!」
「いやいや、汚いでしょ」
「あの猫も吐いてるにゃっ」
「吐いてないわよ。あれは別物」
「むむむむ。あ、押してるにゃ。頑張るにゃ!」
「くっ。なにをしてるの。ゲロに負けないで!」
「ゲロじゃないにゃ!」
「ええいどっちでもいいわよ。そんなヘンテコ生物……かどうかも怪しいヤツに負けたらダメよ!」
「わをーーーーんっっっ!」
「ニャニャニャニャーーーーっっっっ」
「ホォーーールゥーーーーっ!」
「やったにゃあ!」
「やったわん。所詮水鉄砲だわん。高圧洗浄機に勝てるわけないわん」
「ホール……クソ。まさか貴方が負けるなんて……」
「どうにゃ。まいったか」
「うっぷ。まだ少し残ってるわん。まぁいいわん。ヌッコ、後は任せるわん」
「……にゃにをだにゃ?」
「隣にいる狼だわん」
「にゃ?」
「ん?」
「にゃっ!」
「はっ、そうよ。なに馴れ馴れしく話しかけてくるのよっ」
「それはこっちの台詞だにゃ!」
「じゃ、イッヌはマスターのところに戻るわん」
「あっ、待つにゃ!」
「なっ、消えた? というか、破裂でもしたの? 水だけ地面にばら撒かれてるわ。でも残骸が見当たらない。一体……まるで中身だけ取り残されて身体だけが消えたみたいね。ふっ、やっぱり貴方方は人間じゃない」
「タイムはタイムにゃ。人間とかA.I.とか関係ないにゃ」
「ゴチャゴチャと五月蠅いヤツね。凍り付いてしまえっ」
「にゃーっ! 寒いにゃ! 嫌にゃ! 猫は寒いのが苦手なのにゃ!」
「あはははは。凍えろ! 凍えて死んでしまえっ」
「ううー、寒いのにゃ。はうぅ、耳が冷たいにゃー」
「ん? 貴方の耳は頭の上に付いてるんじゃないのか? 何故顔の横を抑えるのよ」
「にゃ?! そ、そうにゃ! こっちが本物にゃ! 間違えたにゃ。ほっぺたが冷たいのにゃ」
「ホッペタ……にしては後ろのような……」
「うるさいにゃ! 細かいことを言うメスはオスにモテないのにゃ!」
「細かくないわよっ。そもそもモテない根拠にならないわ」
「そんなことはどうでもいいにゃ! その毛皮をよこすにゃっ」
「あげないわよ」
「ケチなのにゃ。だったら毛を生やすにゃ!」
「生やす……ですって?」
「うーにゃにゃにゃにゃにゃー」
「な、なんなの。四つん這いになったかと思ったら身体が大きく……より猫っぽい姿になっていくわ。いいえ。これは猫というより……白い虎?!」
「うにゃーっ! ヌッコ、白虎形態にゃ!」
「まさか……人の皮を被った虎だったとは」
「ふっふっふっ。今のヌッコだったら吹雪くらい簡単にゃ。食らうのにゃーっ」
「なに?! うわっ、こ、これって……むしろ暖かい? それに雪というよりは雹じゃないの。いえ、この雹も不自然なくらい暖かいわ」
「うるさいにゃ! ヌッコが吹雪って言ったら吹雪なのにゃ!」
「くっ、負けないわよ」
「くたばるにゃ!」
長引くとまたバッテリーがヤバいにゃ。
一気に決めるにゃあ!
「わぉーんっ!」
「うーにゃーーっ!」
「なんなのこのデタラメな攻撃はっ。私は……私はこんなの、吹雪なんて絶対認めないわーーっ!」
「うるさいにゃ! これで終わりなのにゃ! 氷槍群!」
「わおーーーんっ!」
ふっ、ヌッコに勝とうなんて100億万年早いのにゃ。
マスター、今戻るにゃ!
次回、精霊たちの出番です




