第159話 豪勢な食事にはさせない
「デイビーよ、どうなのだ」
「さて、どうでしょう。教えて差し上げる理由は無いかと」
「ふむ。それもそうだの。では、なんとする」
「そうですね。僕としては当初の目的を果たしました。ですので次の目的を果たそうかと存じます」
「ほう。次とな」
「はい。魔神を駆除し、囚われている人々を解放するための支度をしようと思います」
「実行ではなく仕度とな」
「はい。情報を持ち帰り、然るべき者たちに駆除をさせます」
「では何故ワンを駆除したのかの」
「実力を測るためで御座います」
「なるほどのぉ。で、どうであったかの」
「はい。問題なく駆除できそうで安心しております」
「であるか」
「はい」
「アニカ殿はどうするつもりかの」
「勿論、お返し願います」
「返すと思うかの」
「思いません」
「ではなんとする」
「そんなの、力ずくで取り返すに決まっているだろ！」
「船長、まだ早いですよ」
「知るかっ」
『直ぐに殺すようなことはしないでしょう。精霊様もついておられますからまだ安全です。それより一度退いて体勢を整えましょう』
『退く？！』
『このまま突っ込んでも多勢に無勢。勝ち目は低いでしょう』
『アニカはどうするんだよ』
『精霊様を信じましょう。それに人質とは生きているから意味があるのです。殺したら人質になりません』
『死なない程度に甚振ることはできるだろっ』
『ですからそれは精霊様に任せましょう。彼女……いえ、彼はオルバーディング家の人間です。仮に死すことになっても問題はありません』
『問題しかねぇよっ！』
『モナカくん、ボクは大丈夫だから』
『アニカ！ 聞いていたのか』
『タイムさんが中継して見せてくれてたからね。大丈夫、精霊たちを信じて』
『…………分かった。ナームコも見てたよな。一旦離脱だ』
『心得たのでございます！』
と同時にアトモス号が現れた。
「なんと！」
『さ、兄様』
素早いな。
ワープしてきた……とかじゃない。
ただの移動でも常人では目で追うことはできないからな。
「よし、乗り込むぞ！」
フブキが冷気を放出して神獣や魔神たちを怯ませる。
その隙にタラップを駆け上がった。
「私も乗せてっ！」
「ダメです。これ以上巻き込めません」
「構わん。連れて行くがよい。置いて行くなら……今宵は豪勢な食事となろうの」
「ひっ」
「ふぁっふぁっふぁっふぁっ」
「分かりました。ナユダさん、早く」
「ひぃーっ」
「魔神王、アニカは必ず取り返す。それまで丁重に扱えよ」
「ふむ。では丁重にもてなすとしようかの」
タラップを上げてハッチを閉める。
そして結界の外へと一時離脱した。
「王、よろしかったのですか」
「よい。それよりも進化の儀を始める。アニカ殿を連れてまいれ」
「はっ」
次回、初見です
