第155話 最後の晩餐?
久しぶりに1人で寝る布団は広かった。
いつ以来だろうか。
「「おはよう」」
「おはよう」
起きると直ぐ横にはタイムと時子が正座していた。
俺が起きるのを待っていたのか。
ん? ははっ、心配性だな。
俺が起きる前から手を繋いでいたのだろう。
握られていた手の温もりは既に時子と馴染んでいた。
「「ごめんなさい」」
「ん?」
「「ちゃんと仲直りしたから」」
「そっか」
「「だから」」
「マスターの――」
「モナカの――」
「「隣に居ることを許して下さい」」
「おいおい、許すもなにもこっちからお願いするよ。俺はタイムが居なければ動けないし、時子が居なければ死んじまうんだからな」
でもそれが2人の足枷になっているのも分かっている。
なんとかその枷を外せないものだろうか。
そうすればタイムを前のマスターに、時子を先輩の元に返してあげられる。
「あ、起きたんだ。朝ご飯用意してくるね」
「おはよう。お願いします」
「いいって。仕事なんだから」
ははっ、なんか久しぶりに聞いた気がするな。
昨日あんなことがあったのに、変わったことはなにもない。
2人も居なくなったというのに特に騒いでいる様子もない。
そんなことすら日常だということだろうか。
『ナームコ、起きているか』
『兄様っ! おはようございます』
『おはよう。鈴ちゃんは元気か』
『はい。今朝食を召し上がっているところでございます』
『こっちに戻ってこないのか?』
『申し訳ございません』
『気をつけろよ』
『心得ているのでございます』
用心深いな。
「おまたせー」
ナユダさんが朝ご飯を持ってきて床に並べ始めた。
毎日毎日変わり映えが……いや、文句は言うまい。
でも塩が欲しいかも。
「ちょっといいですか」
ドライバーさんだ。
魔神がこんなところに来るのは珍しいな。
「なんでしょう」
「食事を終えたら外に来て下さい。魔神王様からお話があります」
「分かりました」
「ナユダ、貴方もです」
「はい」
魔神王から話?
『昨日のことがバレたのか?』
『可能性はありますが、証拠は無いでしょう。ですが、そのつもりで挑むのがよろしいかと』
『そうだな。ナームコ、そっちになにか変化はあるか?』
『兄様っ! わたくしは兄様成分が足りなくてフラフラなのでございます』
『それは放っておけ』
『兄様?!』
『魔神王から話があるらしい。場合によっては脱出することになるからな』
『そういうことでございましたか。先程から魔神様が2人ほどアトモス号を遠巻きに見張られていやがるのでございます』
『そういうことは先に言えっ!』
『申し訳ございません。兄様成分と比べたら……いえ、比べるのも烏滸がましいほど些細なことと存じたのでございます』
なにが兄様成分だ。
とはいえ、これでほぼ確定だ。
『証拠はともかく俺たちがやったと思われているようだ』
『そうでしょうか。まだ疑惑の段階だと思われます』
『どうしてだ?』
『僕たちがやったと存じているなら呑気に朝食が終わるのを待つ理由がありません』
『最後の晩餐とか』
『考えにくいです』
『ならその疑惑を話し合いで吟味しようということか』
『王様自ら来られていますから、そういうことなのでしょう』
疑惑か。
進化の儀を見学しなかったし、その間のアリバイがあやふやだからな。
疑われるのも仕方がない。
さて、どう切り抜けようか。
次回、尋問開始?




