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携帯は魔法杖より便利です 第5部 歪な共生  作者: 武部恵☆美
第2章 違いを知るためには
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第14話 結界の中へ

 段々と目的地に近づいていくが、結界の中が中々見えてこない。

 曇りガラスのように白く濁っていて内側が見えづらくなっている。

 俺たちが住んでいるところの結界は薄緑色の半透明で、ここよりはよく見える。

 確か建物とかは内側だけで、外側は無いんだったな。


「まずは外側の結界の中に入ろう」

「いきなり入るの?」

「外側に人がいそうな感じはしないからな。それでも内側の建物から一番遠いところにしようか」

「となると……ルイエ」

「え?! えっと……んー、ここ?」

「そこは三番目。一番はこっち」

「うう……」

「もー、ちゃんと計算したの? あーそうじゃないって」


 どうやら計算方法を間違えているらしい。

 よくここに辿り着けたな。

 一直線でこれたからだろうか。

 町中のナビだったら無理そう。


「到着しました。中へ入()ますか?」

「入ってくれ」

了解(いょうかい)。少々お待ちください」

「ん? 少し掛かるのか?」

「結界の構成方法が違いますので、解析をしなけ()ばな()ません」

「分かった」

「解析が終わ()ました」


 早っ!


「中へ入()ます」


 入り方はいつもと同じだ。

 結界に向かって子機を飛ばして貼り付ける。

 すると6つに分裂して正六角形の穴を開ける。

 穴にはシールドが展開されているから中と外で余計なもの――魔素とか毒素とか――が行き来することは無い。

 勿論(もちろん)アトモス号は素通りできる。

 通り抜けたら穴を塞ぎ、子機を回収する。

 実に速やかでスムーズだ。

 それでも今回はデイビーに見せつけるという意味もあって、ゆっくりと解説付きでやってもらった。

 中に入ると、地図のとおりなにも無い。

 木が生い茂った林があるくらいだ。

 ……見たことの無い木だな。

 まがまがしいというか……こっちではまだ見たことのない種類だ。


「あれはもしかして魔樹ですか」

「魔樹?」

「はい。樹木が毒素に冒されると魔樹になります。恐らくそれかと」

「てことは、結界の中なのに毒素に冒されているってことか?」

「そうなりますね」

「それじゃ生存者は……」

「いえ、その心配は無いでしょう。結界の維持に人間は不可欠ですから」

「そうか」

「しかし、こうなると何故外側の結界を維持しているのかが疑問ですね。恐らくここ以外の木々も魔樹の可能性が高いでしょう」

「そうなのか」

「はい。ですから外側に建物が存在しなかったので……しょう……」


 なるほど。

 建材として使えないからな。


「…………」

「どうかしたか?」

「いえ。なんでもありません」

〝はっ! 兄様? 兄様! 兄…………〟


 ナームコのヤツ、やっと目が覚めたらしいな。

 なにか言うかと思ったけど、もう静かになりやがった。

 まさか二度寝……ってことは無いか。

 静かな分にはいいことだ。放っておこう。

 内側の結界の中はというと、やっぱりよく見えない。

 こうなると本当に地図頼りだ。

 一番近い家までそれなりに距離はある。

 この先は地図だと牧場か?

 牛とか豚とか馬がいるのかな。


「鈴、中の様子は分かるか?」

「外からでは無理です」


 やっぱり中に入らないと無理か。


「小さな穴を開けてそこから覗き込むことは?」

「難しいと思います」

「堂々と入るしかないのか」

「突入しますか?」

「そうだな。外側には誰も居なさそうだし……」

「あっ」

「時子? どうした」

「あ、ううん。レーダーに一瞬なにか居た反応があったんだけど、直ぐ消えちゃった」

「魔物か?」

「分かんない」


 魔樹とかいうのがあるくらいだ。

 魔物や魔獣が居てもおかしくない。

 下手に構うよりさっさと中に入った方がいいか。


「人間の可能性は?」

「多分違うと思う」

「ルイエ、どうなんだ?」

「えっ、なにが?」

「なにがじゃなくて……もういい」


 データの一元管理はルイエに任せているはずなんだが……


『タイム、どう思う?』

『んー、一致するパターンが無いから分からないっていうのが正直なところだね』

『一致しない? 人でも魔物でも魔人でも魔獣でもないってことか?』

『魔人に近いけど、近いってだけで別物っぽい』

『魔人に……』

『どっちにしても、船を降りたらタイムには分からないよ』

『そうだな』


 魔素や魔力は俺やタイム、時子には視覚以外では知覚できない。

 逆も同じようなもんだけど。

 船もここの魔素や魔力は感知できないんじゃなかったっけ。

 出来るようになったのか?

 鈴の適応能力高過ぎだろ。


「アレは放っておいて中に入ろう。目標はアレじゃない。鈴」

了解(いょうかい)


 再び結界に穴を開けて中へ入る。

 そこは地図どおり牧場で、牛が沢山居た。

 ノンビリと牧草を食べている。

 音も無く静かに侵入した所為か、全く気づかれていないようだ。

 近くでは牧草を掻いている人や牛の身体を撫でている人も居る。

 本当だ、ちゃんと居た。

 1人がアトモス号を見つけたのか、指を指して騒ぎ始めた。

 するとみんながこっちを見上げ始めた。

 牛たちも異変に気づいたらしい。

 驚いた牛たちが蜘蛛の子を散らしたように逃げていく。

 そりゃ驚きもするか。

 突然こんな大きなものが浮いていれば当たり前だ。

 現代人なら慌てず騒がすスマホを向けて、動画を撮ってSNSに投稿しているかも。

 少なくともあの人たちはそういうことをしていない。

 そういう文化は無いらしい。

 ただ呆然と手を止めて見つめている。


「着陸できる場所はあるか?」


 地図で見る限り、空き地っぽいところは無い。

 全く無いわけじゃないが、建物の側ばかりなんだよね。

 離れたところの空き地っていうのが見当たらない。

 隙間なくなにかしらあるって感じだ。


「牛が居なくなったので、このまま降りられ(いやえ)ます」


 そうなるかー。

 でも第一村人が都合よくそこに居るから着陸場所を提供してくれた牛たちに感謝しよう。


「よし、着陸してくれ」

了解(いょうかい)


 話が通じる人たちだといいんだけど。

次回、出撃準備をしよう

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