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第131話 人ひとりの力

 これは酷い。

 彼らは本当に魔神(まがみ)様たちとやり合う気があるのでしょうか。

 とても訓練をした兵士には見えません。

 あれでは槍というよりただの木の棒です。

 弓も予想どおり役に立っていません。

 狩猟見習いの方でもあそこまで下手な会員はいらっしゃらないでしょう。

 本当にウッド様を彼らが倒したとは信じられません。

 恐らく今ここに来ていない方が主力なので御座いましょう。

 いえ、いらっしゃらない方をどうこう言っても仕方がありません。

 こんなバラバラでは相手のいいようにやられてしまいます。

 役割分担が出来ていません。

 せめて魔神(まがみ)様だけでも倒せればいいのですが……なにやら話をされているようですね。

 今更話をしてどうされるおつもりなのでしょう。

 とにかく体勢を立て直さなくては。


「バラバラではいけません。もっと密集して」

「きゃあ!」

「うわっ、このっ」

「くそ」


 誰も聞いていませんね。

 これでは支援もなにもありません。

 しかしこのマントは素晴らしい。

 まったく神獣様に気づかれません。

 彼らも標的にされる者とされない者が居るようですね。

 魔力の弱い者はよく狙われるようです。

 そういう意味ではナユダ様は一度も狙われておりません。

 リーダーに選ばれたのはそういうことなのでしょうか。

 だからゆっくり狙えるはずなのですが、慌てていてまったく落ち着きがありません。

 あれでは当たるものも当たりません。

 僕の声も聞こえないようですし……

 モナカ様が素晴らしく感じてしまいます。

 いえ、まだマシというくらいですが。

 このままですと全滅もあり得ます。マズいですね。

 彼らが全滅するのは構いませんが、そうなると今度はこちらに火の粉が降りかかってきてしまいます。

 なんとかして頂かないと……

 しかし、あれだけの猛攻を受けていながら誰も怪我をしていないのは不思議ですね。


『もしかしてタイム様が防御をされているのでしょうか』

『そうですね』『ねー』

『攻撃はされないのですか?』

『過干渉になるので攻撃力のある子たちは付いていません』『ませーん』

『左様で御座いますか』

『それと、双子(タイム)は今攻撃も防御も出来ないから、御自分で対処されてください』『くださーい』

『そうですか。分かりました』


 こちらに来ないことを祈りましょう。


「デイビー無事か」

「船長。僕はなんとも」

「神獣を殺るぞ」

「それは最終手段です。今はまだ時期尚早です」

「まさか全滅するまで待てとか言わないだろうな」

「彼らが助けを求めるまでは待機してください」

「助けを?」

「はい。まだ彼らはなにもしていません。全て僕たちがやってしまっては意味が無いのです」

「救済対象なんだから細かいこと言うな」

「どのように救済するかは中央が判断します。僕にはその権限はありません」

「いちいち中央省に戻って判断してもらって戻ってこないといけないのか? なんのためにお前が居るんだよ」

「僕の役目は調査をすることです。救済対象というのもあくまで仮のことです」

「俺は中央と関係ないんだが」

結界都市(ラスティス)で暮らす以上、無関係ではありません。都市民として中央の命令を遵守する必要があります」

「俺はいつから都市民になったんだ?」

「身分証を入手した時点です」

「俺の身分証は携帯(スマホ)なんだが?」

「形が問題になることはありません。登録されていることが重要なのです」

「いつ登録したんだよ」

「それは管理部門にお聞き下さい」

「俺の意思じゃないっ!」

「苦情も管理部門へお願いします。おや、トキコ様に動きがあったようですね」

「! 時子!」


 これは……魔力の嵐と言っても過言ではありませんね。

 一体何処にこれほどの魔力があったのでしょう。

 トキコ様は魔力を有していないはず。

 ワン様の物とも質が異なります。

 携帯(ケータイ)の力……ということで御座いましょうか。


「ところでニーエ様はご無事でしたか」

「いや、間に合わなかった。でも伝言を預かったよ」

「ナユダ様にで御座いますか」

「ダイスさんに……だ」

「ダイス様にですか。ということは、ダイス様の恋人というのは」

「ニーエさんで間違いないんじゃないか」

「そうですか。残念な結果です」

「もう少し早く行動していれば……」

「あなたに責任はありません」

「そうかも知れないけど、助けられたかも知れないんだぞ」

「自分が動けば命が助かるなどと驕らないことです」

「別に驕ってなんか……」

「あなた1人が動いたところで助けられたりしません。むしろ作戦が失敗する可能性が上がるだけです」


 もっとも、現状を見る限り成功しているとは言えませんが。


「そんなことないだろっ」

「そんなことしかありません。人ひとりの力なんてたかが知れています。だから人は群れるのです」

「だったら(なお)のこと俺も参戦した方がいいだろ」

「彼らには彼らの――」

「五月蠅いっ! 俺は目の前に助けられる人が居たら助けるだけだっ。中央なんか知らんっ!」


 ……ふぅ、こうなるとは予想していましたが、予想より行動が遅かったのは意外でした。

 人として嫌いではありませんが、船長としては不合格ですね。

 お手並み拝見としますか。

次回、女神は誰なのか

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