第130話 全滅不可避?
レジスタンスが一斉に矢を放つと同時に、俺と時子も飛び出した。
俺はニーエさんの元へ。
時子はワンさんと戦うために。
時子、気をつけろよ。
『タイム、時子の様子を――』
『左上にPiPしておくよ』
『ついでに――』
『右上はレジスタンスだね』
『あ、ああ』
えーと、時子はワンさんと対峙しているな。
神獣たちが移動したぞ。
レジスタンスの方に向かったらしい。
今のところ大丈夫だ。
「ニーエさんっ!」
「う……あ……」
う、これは……
素人目にも助からないことは一目瞭然だ。
全身が腫れ上がってただれている。
肉が腐って骨が見えているところもある。
かろうじて息をしているようだけど、虫の息って感じがする。
息をしているのが不思議なくらいだぞ。
「大丈夫ですか!」
「うう……ダ……ダイ……に……先に……行くねっ……伝…………え………………」
「ニーエさんっ!」
「………………」
くっ、助けられなかった。
見ていることしかできなかった。
作戦のためとはいえ、見殺しにしたようなもんだ。
もっと早く助けにきていれば助けられたかも知れないのに。
だからといって助けに行けば作戦は失敗していたかも知れない。
人ひとりを犠牲にしてまでもやらなければいけない作戦だったのか?
俺だったらこんな方法は取りたくない。
いや、今はそれよりこの作戦を成功させることだ。
それが最高の供養になると信じて……
でも……〝ダイ〟?
『タイム、もしかしてこの人が』
『ダイスさんの恋人だと思うよ』
やっぱりそうか……
『ダイスさんになんて言えばいいんだろう』
『見たままを言うしかないよ』
『……そうだよな』
見たまま……か。
さすがにこの姿を包み隠さず話すのは気が引ける。
なにしろゾンビの方がまだ肉付きがいいんだから。
それにこのまま連れ帰ることも出来ない。
火葬しないとマズいよな。
時子にやらせるのか?
デニスさんと違って一応人の形が残っているんだぞ。
ん? ワンさんと話をしているのか。
映像だけだから分からないな。
とにかく、レジスタンスの方でなんとかしてもらえないものだろうか。
えっ! 大丈夫か?
神獣にかき回されてバラバラじゃないか。
孤立したところを襲われているぞ。
しかも乱戦だから弓も使えない。
槍もまともに使えていない。
同士討ちしないのが不思議なくらいだ。
『タイム、どうなっているんだ』
『どうもこうもないわん!』
『こいつら、素人以下にゃ!』
『そんなに酷いのか』
『防戦一方なのよ。だらしないわねぇ』
『デイビーはなにをやっているんだ』
『過干渉だからってなにもしてないよ』
『ここまできて過干渉もあるかっ』
『でも指示出ししようにもバラバラだし、ナユダさん自身司令塔として役に立たないから干渉自体しようがないんだよ』
このままだとまずいぞ。
全滅だってあり得る。
そうしたら結局こっちに降りかかってくるんだぞ。
『神獣の攻撃は単調だからなんとかタイムたちが防げてるけど、反撃までは……ね』
タイムが防いでいるんだから怯まずに攻撃すればいいのに。
神獣が迫ってくることしか見えないくらい余裕が無いから脅えて逃げ腰になっているらしい。
目を瞑って顔を逸らして動くことすら出来ていない。
タイムが居なけりゃとっくに全滅していたのでは……
二匹同時だとさすがのタイムも対応しきれないようだ。
防ぐのではなくレジスタンスの人たちを引っ張って避けさせている。
だからなのか泥汚れや擦り傷だらけになっている。
大きな怪我が無いから幸いだ。
『サムライたちと交代は?』
『限界まで出払ってるし、引っ込むことは直ぐ出来ても、彼らは身分証を持ってないからここから彼らのところまで行かなきゃいけないの』
『メタモルフォーゼは?』
『それが出来るのは私だけだよ』
くっ、過干渉になるからと戦闘力の高いタイムたちを引っ込めていたのが仇となったか。
『とりあえず最弱はサムライと交代。万が一別の魔物がニーエさんの死体を漁りに来たときに備えて待機』
『承知したでありんす』
『タイム、行くぞ』
『うんっ!』
次回は後方腕組みオジさん……にはなれない




