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第12話 破壊は知ることの手段

『デイビー様、この装置は壊しても構わないでございますか?』

『壊すのですか』

『構造を調べて船に取り込むのでございます』

『構わないでしょう。僕としては機能さえすればどのような形でも問題ありません』

『ありがとうございます』


 大丈夫なのか?

 ナームコは船外に出てくると、アンテナが取り付けられている上部へ上っていった。


『落ちるなよ』

『兄様がわたくしの身を案じてくださるのでございますか! 感無量なので――』

『落ちて死なれたら死体の処理に困るからだ』

『兄様?!』

『いいから、気をつけろ!』

『うう、気をつけるのでございます』


 アンテナの前で両手を広げ、呪文のようななにかを呟いている。

 翻訳されないところをみると、錬金術を使っているようだ。

 (しばら)くするとアンテナが形を崩していって、跡形もなくなくなってしまった。

 あれが壊すってことなのか。

 その後も色々手振りをしながら呪文を唱えている。

 ゴーレムを作るときより長くて複雑な動きだ。

 1分が経ち、2分が経ち、それでもまだ終わらない。

 下からでも肩で息をしているのが分かる。

 本当に落ちるなよ。


『終わったのでございます。デイビー様、確認をしていただけますでございますか?』

『分かりました』

「娘、中の……調整は、はぁ、任せたぞ」

〝はい、分か()ました〟


 かなり疲れているみたいだな。

 一息ついてからでもいいのに。

 断言しただけあってハードの方は特に問題なく、魔波を拾っているらしい。

 ソフトの方も少し調整するだけで済んだようだ。

 役割としてはローカルエリアを広げるだけで、結界外から中央省とやり取りできるようなものではないとのこと。

 それでも十分だけどな。

 タイムもこれを利用して繋がれることを確認した。

 前回みたいに通信が分断されることが無くなった分、自由度が上がる。


「お疲れ様。落っこちなくて偉かったぞ」


 降りてきたナームコの頭を撫でて(ねぎら)ってやる。

 図に乗るから軽く2往復で済ませた。

 たったそれだけでも過剰反応してくるのは目に見えていたけど。


「兄様っ!」

「こらっ、誰が抱き付いていいって言った! はーなーれー……ったく、しょうがないな。今だけだぞ」

「兄様?!」

「なんだ? 嫌なら離れてもいいんだぞ」

「いえ、その。ありがとうございます」

「気にするな」


 抱き付いたというより、倒れないようにしがみ付いている感じだからな。

 さすがにそんなヤツを突き放すことは出来ない。

 ほとんど足に力が入っていないじゃないか。

 よくこの足で上から落ちずに降りてこられたもんだよ。

 とはいえ、しがみ付くのも疲れるだろう。


「おんぶしてやるから、背中に乗れ」

「いえ、そこまでしていただかなくても――」

「いいから乗れ。もう二度とないチャンスかも知れないぞ」

「あの……でございましたら、お姫様抱っこを所望するのでござ――」

「あ?」

「な、なんでもございませんっ。ありがとうございます」


 贅沢な……ったく。


「ほら、これでいいのか」

「兄様?!」


 時子の手を離し、ナームコを抱きかかえてやる。

 ちょっと奮発しすぎたか?

 騒ぎ立てるかと思ったら、固まって動かなくなったぞ。

 やっぱりやり過ぎたか。

 まー2度目は無いからいっか。


「鈴も頑張ったな。お疲れ様」

〝あ()がとうございます〟

次回、Google mapは無料だけど……

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