第116話 作戦の成否を握る重要事項は……
「でもなんでドライバーの神獣がワンと一緒なの?」
「知らないわよ。ダボに聞いて」
「おいおい」
「ったく、相変わらずだな、ナユダは」
「でもナユダが持ってきた情報が間違ってたこと無いからなぁ」
「そうねー。ナユダが言うんなら一緒に居るんじゃない?」
だからその信用は何処から来ているんだ?
「てことは、私たちが神獣2匹を退治して」
「彼らがワンを始末するのよ」
「待て待て待て。勝手に決めるな!」
「いいでしょ。神獣2匹より楽なはずよ」
「楽とかの問題ではなく……」
「そうですね。僕も賛成できません。事を成すのはあくまで貴方たち。僕たちは後方支援です」
「神獣を倒すために魔神を引きつけて、ついでに倒してよ」
ついでで倒せるかっ!
「なるほど」
「こんな屁理屈に納得するな!」
「屁理屈も理屈です。なので此方から提案があります」
「提案?」
「はい。僕たちが神獣様を引きつけますので、魔神様は貴方たちで対処してください」
なるほど。
あくまで魔神は彼らにやらせる……ということか。
「なんでよ!」
「当然です。目的は神獣様ではなく、魔神様なのですから」
「そうだけど、モナカに犬が殺せるの?」
「………………」
そこは考え込むのかよ。
考える必要無いだろ。
答えは簡単だ。
「無理に決まっているだろ」
「船長!」
「お前も考え込んでいたってことは、無理だって分かっているんだろ」
「魔獣は倒したんですよね」
「魔獣は犬じゃない」
「………………はぁ。フブキ様も犬ではありません。雪狼という狼です」
「雪狼は絶滅したんだろ。フブキはシヴァイヌで犬だ。狼じゃない」
「絶滅していません。フブキ様が居ます」
「……話にならないな。エイルのところにある血統書はシヴァイヌだ。発行元も中央省だったよな」
「その後の調査で雪狼と判明しました」
「なら血統書がそのままなのは何故だ」
「それは……分かりません。僕の管轄ではないので」
「とにかく、狼は犬じゃないし、フブキはフブキだ。たとえ狼だろうと関係ない。俺たちは魔神を相手にするぞ。これは決定だ!」
「船長!」
「モナカ、ホント!」
「……え?」
「今魔神を倒してくれるって言ったよね」
「…………え?」
あれ?
そんなこと言ったっけ。
「神獣は私たちに任せて」
あれぇ?!
どうしてこうなった……
「貴方って人は……」
「マスター……」
「ホント、犬が絡むといつも以上にダメね」
それはいつもダメってことですか。
「兄様、わたくしは何処までもついて行くのでございます」
「っはははは、はぁ」
「それじゃ、詳しい話をするわよ」
『まったく、貴方という人は……もう少し、いえ。もっと冷静さを学んでください』
『いや、そうは言うけどさ』
『そうね。最近はマシになったかと思ってたけど、所詮モナカはモナカだったって事よ』
『時子?』
『そうだね。マスターの犬好きは今に始まったことじゃないからねー』
『タイムまで!』
『だって事実だもん』
『そうね。事実よ』
『と、とにかく今はナユダさんの話を聞こうじゃないか。な!』
話を要約すると、普段は魔神2人と神獣2匹のひと組で巡回を行うところを、今回はワンさん1人と神獣2匹で巡回するらしい。
しかも進化の儀の間に巡回させるのは稀とのこと。
普段なら有事に備えて待機しているらしい。
なのに今回は、一方には待機ではなく監視をさせて一方には巡回をさせる。
神獣が2匹居るとはいえ、魔神が1人なのはチャンスだという。
作戦は簡単。
囮役のメンバーが魔物に襲われる。
それを発見したワンさんに魔物を退治させる。
弱ったところを襲撃する。
……何処かで聞いたような作戦だな。
囮役はナユダさん?
「囮役はニーエがやるわ」
「ニーエさん?」
「そ。対象は第三集落のワン。必然的に第三集落の人間になるの。そして今ここに居るのは私とニーエだけ。私だと2回連続になるから、ニーエ、貴方の仕事よ」
「分かってるわ」
「いい? 油断してると貴方も危ないの。気をつけてね」
「分かってるわ!」
「大丈夫、私にも出来たんだから、貴方にも出来るわ」
「…………分かってるわ」
「しかし、都合よく魔物が現れるのでしょうか」
デイビーの疑問はもっともだ。
俺も気になる。
「現れなければ作戦は中止よ」
「中止ですか」
「そ。中止」
なんだその適当な作戦は。
「随分といい加減なんですね」
「仕方ないでしょ。魔物が現れるかどうかなんて運次第なんだから。これまで何度中止になったか分からないわ」
「左様で御座いますか」
何度も中止ね。
なら今回も中止ってことにならないかな。
そうすればワンさんと戦う必要も無くなる。
でも、いずれは戦うことになるのかな。
いやいや、そこは中央省の連中でやってくれ。
俺たちは関係ない。
……関係ない……よな。
次回、残念なお知らせです




