第113話 役に立つでしょ
「とにかく今後の話は後だ」
「なにが後なの?」
「ナユダさん、今日はまたなにかあるんですか?」
「ん? 今日は特にないけど……ちょっと、ね」
「ちょっと?」
「うん。またあそこに付き合ってほしいの」
あそこ……地下室のことかな。
「大丈夫なんですか?」
「なにが?」
「また見つかったりしたら……」
「だ、大丈夫だよ。そんなドジ踏まないって」
本当に大丈夫なのか。
なんにしてもこっちとしても昨日のこともあるし、救済するにしても彼らと話し合いの場を用意してもらえるのはよかった。
話し合い自体はデイビーに丸投げだけど。
再び馬小屋へと足を運ぶ。
今回フブキは置いてきた。
中に連れて行けないのにここで臭い思いをさせておくのは可哀想だからな。
隠し扉を通って下へ降りる階段を進む。
そしてナユダさんが地下室の扉を開こうとした。
「お待ちください」
「ん? どうかしたの」
「船長、貴方が扉を開けてみてくれませんか」
「え、俺が?」
「お願いします」
「俺は別に構わないけど……」
なのでナユダさんの代わりに俺が開くことになった。
なんで俺?
……あれ?
鍵でも掛かっているのか?
いや、ノブは普通に回る。
でも扉がビクともしない。
まるで壁にドアノブが付いているだけみたいな感じだ。
扉とは思えない。
「モナカ? 遊んでないで開けてよ」
「遊んでいないって」
「ホントに?」
「ではトキコ様、開けてみてください」
「え、私?」
「まだやるの?」
「すみません。もう少々お付き合いください」
「もー」
「……あれ?」
どうやら時子も俺と同じ結果らしい。
「やはりそうですか」
「やはり?」
「前回お話ししたように、やはりこの扉は転移装置のようです」
「あれか。だから俺と時子じゃ開かなかったんだな」
「左様で御座います」
その確認がしたかったって事か。
「ですので、今度は僕が開けてみましょう。失礼します」
そう言ってドアノブを回したのだが……
「開きませんね」
「でも俺と違って扉がガタガタ動いたな」
「ふむ、魔力に反応するのは間違いがないようです」
「マリョク?」
「次はわたくしが試せばよろしいのでございますか?」
「そうですね。お願いします」
「ねー、なんなの一体」
「わたくしでも無理なようでございます」
「では最後にスズ様、お願いします」
「うゆ?」
「鈴にもやらせるのか!」
「お願いします」
「んーと?」
「はあ……鈴、この扉を開けてくれるかい?」
「開ければいいの? 分かったー!」
鈴にとってドアノブは少し高いところにある。
背伸びをするほどではないけど。
そんなドアノブを回すのだが……片手じゃ回らないらしい。
両手で持って回している。
ああ、可愛いなぁ。
「あえ?」
やっぱり回るだけで開か……開いた?!
最初は同じようにガタガタいうだけだったのに、ナユダさんをチラッと見た後に回したら開いたぞ。
「パパ、開いたよ」
「あ、ああ。ありがとう、よしよし。おい、どういうことだ」
「分かりません。僕の予想では登録された魔力でのみ開くものだとばかり……ふむ、興味深い」
「なんの話? とにかく中に入るわよ、もー。なんなのよ一体」
次回、過程なんて知らない




