第111話 顔が赤いのは何故なのか
〝おいしくなぁれ〟のお陰で味気ない朝ご飯も美味しくなっている。
あの部屋でベーカーが教えたことは反映されていたのかな。
でもアレはホットケーキだし、これは丸パンだし。
なによりナユダさんだからな。変わるはずがない。
スープもやっぱり適当に切られた野菜だけだし……?
「時子、食べないのか?」
「えっ?! あ、ううん、食べるよ、うん」
「どうした?」
「な……にが?」
「顔が赤いぞ」
「そんなことないよ。気の……所為だよ」
もしかして、ナユダさんの話を聞いて照れているのかも。
ウブだなぁ。
『……本当にマスターはバカだね』
『バカってなんだよ』
『そこじゃないから』
『そこじゃないって……なにがだよ』
『それを分かってないのはマスターだけじゃないかな』
『分かっていないって……え? 俺だけ? デイビーは分かっているとでも?』
なんだよそんな無言で深々と頷きやがって。
どういうことだ。
『ナームコも? ……まさか鈴ちゃんも?! ……ナユダさんもかっ!』
『あ、ごめん。ナユダさんは除外で』
『なんだよそれは!』
頷きかけて除外かよ。
『あはははは』
結局教えてくれないのはいつものことだ。
でも食べ始めたからいっか。
うーん、いつもならよく噛んで食べているのに、今日は早いな。
「急がなくていいぞ。別に急かしたわけじゃないんだから」
急いで食べてまた落としでもしたら大変だからな。
「うぐっ……べ、別に急いでなんかないけど!」
「そうかあ?」
「そうだよ。もう………………バカ……」
ゆっくりになったけど、それでもいつもより早い。
やっぱり落ち着かないのかも。
『時子、今更意識してどうするの』
『な、なんの話?』
『あっそ。ならシャキッとしなさい』
『う……』
あ、また早くなった。
ちょっとむくれてる?
なんだかな。
「な、なに?!」
「いや、落ち着くかなって思って」
「う……」
「はぁ……マスター、頭なんか撫でたら余計落ち着かないよ」
「え?! す、すまん」
「ううんそんなことない」
「パーパ!」
「ん? おー綺麗に食べられたね。えらいえらい。よしよし」
「えへへへー」
「ほっ」
「鈴ちゃんに感謝しなさいよ」
「なっ、なんでよっ」
「知ーらないっ」
タイムはなにを言っているんだ?
なんにせよ時子が普通に食べ始めたぞ。
逆にゆっくりな気もするけど。
次回、〝俺たち〟のメンツ




