第109話 お腹が減るくらい一杯……
さて、戻ってきたわけだが……気が重いな。
ナユダさんになんて責められることやら。
「あ、モナカ!」
早速出てきたぞ。
「あ、えーっと……おはよう」
「おはようじゃないよ、もー。約束したのに」
あー怒っている怒っている。
「ごめんなさい」
「ふぅー、まぁいいわ」
え、いいのか。
意外とアッサリしているな。
「朝ご飯にしましょ。昨日は一杯動いたからお腹減っちゃったよ」
「一杯?!」
「うん。だからって〝オカワリ〟はできないけど。ふふっ」
「あ、ああ……そうなんだ」
「じゃ、待っててね。仕度してくるから」
そうか、一杯動いても量は変わらないのか。
それでカロリー足りるのかな。
どのくらい使うものなんだろう。
たしか繁栄するときって無防備になるからササッと終わらせるらしいけど……野生動物じゃないからなぁ。
あ、でも鮭は繁栄したらオスは死ぬんだっけ。
そのくらいカロリーを……って、なに考えているんだ。
でも一杯か……
いやいや、ここではそれが普通……なんだよな。
繁栄のため、子孫を残すため、ごく当たり前の……その当たり前を俺はまだ……
いやいやいや、まだ若いし、そういう機会だって……あるのか? この異世界で。
そもそもサイボーグ族になった俺に子孫が残せるのか?
同じサイボーグ族が居るとは思えないし……
仮に時……人間との間に残せるとして、生まれてくる子供は人間? それともサイボーグ?
人間……だよな。
だってアソコは機械じゃなくて生身だし、つまりサイボーグ同士の子供も人間?
んー、その辺はどうなっているんだろう。
実際に試してみるしか……試すってなんだ?
まるで人体実験じゃないか。
大体誰と試すって……はぁ。
「なに?」
「え?!」
「さっきからチラチラ見てるけど」
時子を?!
「みっ、見て……た?」
「見てたわよ。それに妙に強く握ってくるじゃない。そんなの直ぐバレるわよ」
バレるとか、そんなんじゃなくて……
どうやら無意識にチラ見していたらしい。
時子と? 人体実験?!
そんなの、したいに決まって……じゃなくてっ!
「ごめん。なんでもない」
そんな、時子とお腹が減るくらい一杯するとか……
ど、どうなんだろう。
チラッ……じゃなくてっ!
「もう……バカッ」
「バカってなんだよ」
「バカだからバカって言ったのよ。ふんっ」
くっ、そりゃバカなことを考えていたけど……まさか、思考を読まれた?
時子はどう思っているんだろう。
俺と一杯……じゃなくて1回でも子孫繁栄を……待て待て待て。
だからその相手は……俺じゃなくて……
「はぁ。ホントにマスターはバカだね」
「なんだよタイムまで」
「なんでもありませんっ」
「ったく、2人してなんなんだよ」
「……でも同じサイボーグ族か……ふふっ」
「なにが同じだって?」
「ふへ?! なっななななんでもにゃいんよなんでぃえも。あひゃ、あはははは」
「そんな噛み噛みじゃ説得力無いぞ」
「あー発音処理のメンテニャンスが必要きゃもー? にゃんちゅって」
それで誤魔化しているつもりか?
なんだかな。
あー、朝ご飯、まだかな。
次回、その話を今するのか




