第108話 大事小事
なんでここに、しかも王様自ら……
「お……はようございます」
「おじいちゃん、おはようございます!」
鈴ちゃんに掛かれば王様もおじいちゃんか。
「うむ、おはよう」
全員がおはようを言い終えると、ゆっくりと満足げに返してきた。
てか王様より高い位置から挨拶とか、もしかしてすげー失礼なことをしたのでは?
とにかくタラップを降りなくちゃ。
「えーと……」
あれ? もしかして王様1人?
付き人は? 護衛は? 無しなの?
不用心だな。
「もしかして昨日の繁栄の儀のことでしょうか」
というか他に思い当たる節がない。
「うむ、それについては大変失礼をしたようだの。詫びよう」
「いえ、僕も暴れてしまいましたし、そこはお互い様ということで……」
って話じゃなかったっけ。
「であるか。ふむ、我が民、ダイスが迷惑を掛けたそうじゃの」
「あ……はい」
そっちだったか。
もう連れていかれたから終わったものだと思っていた。
「深入りするなと言っておきながら、我が民が深入りをしてしまったの。彼奴への処罰は此方で決める。不満だろうが理解を願おうかの」
「いえ、不満なんて……ですが、その……」
「分かっておる。手心など加えず厳罰に処すでの」
「いえ、その逆でして……」
「むう、逆だと申すか」
「確かに強引に中へ入ってきたことは事実です。ですが最終的にはそれを容認して留まることを許可したのは僕の責任です」
「ふむ、なるほどの。ふぉっふぉっふぉっ、モナカ殿は優しいのぅ。じゃがそれでは他の民への示しが付かぬ。どのようなものになるかはワンに任せておる」
「ワンさんに?」
連れていったのはダボさんじゃなかったっけ。
でもダイスさんはワンさんが管理しているところの住人。
当たり前といえば当たり前か。
ワンさんに引き渡したのかな。
その場にワンさんも居たっぽいし。
「よいかの」
「分かりました」
ワンさんがどんな罰を与えるかは分からないけど、これ以上口出しできないか。
「うむ。迷惑を掛けたの」
「いえ、こちらこそ」
「ふぉっふぉ。またの」
それだけのために出てきたの?
王様が自ら?
しかも罰の内容は他人任せ。
王様ってこんな感じなのか。
イメージと全然違う。
「さようなら」
「おじいちゃんもう行っちゃうの?」
「ふむ? また今度、ゆっくりしに来なさい」
「うんっ! バイバーイ!」
本当、なにしに来たんだってレベルだな。
こういうのはワンさんにやらせればいいのでは?
念話が出来るんだし。
王様自ら出てくるだけの理由か……
それとも俺が軽く考えているだけで、それだけの大事ってことなのかも。
次回、誰と繁栄したいですか?




