底辺不良中学時代 (2)
生徒総会が開催された。
生徒会側からの報告が終わり、
「これから質疑応答に移ります。
皆さん、意見はございませんか?」
誰も手を挙げなかった。
その時、
私は、
三年生で、
しかもクラスで一番背が高かったから、
体育館の最後尾に居た。
生徒全員が座っていたので、
前方をよく見渡せた。
予想された事だが。
あれほど、「決起する!」って、盛り上がっていたのに。
じゃあ、そろそろ戦闘開始と行きますか。
もちろん、
ここで私が挙手すれば、
孤立無援になる事は判っていた。
でも、
どうせ私は嫌われ者で、
何時も孤立していたから、
あまり変わりが無い様な?
それに、
『教師に一人で対峙する』のは慣れていた。
私にとって、
学校の授業は、
マンツーマン授業みたいなものだったから。
例えば、
戦前の海軍出身の『担任の先生』は、
社会科の教師だったのだけれど、
その授業形態は、
マシンガンの様に生徒に質問を連射して来る。
その全てに私が即答して行く。
常に、そんな感じだった。
ある時、
「『担任の先生』の『えこひいき』が酷過ぎるから、
無視しよう。
質問には、
誰も答え無い様に」
と御触れが出回ったのだが。
その時の授業で、
実は、
私以外は誰も答えていなかった事に気付いた。
騙された。
皆、
困った時には、私を頼って来るけど、
いざとなったら、
私を見捨てる。
救いの手が指し述べられた事など、
一度も無い。
でも、
それで良いんだよ。
ただの自己満足だから。
正直言って、
『私が決起したら、何かが変わる』とは、
全く考えていなかった。
私は挙手して発言権を得、
立ち上がって意見を述べた。
「一年生は知らないとは思うけど、
去年までは、
もっと自由だったんだ。
例えば、
ボタンダウンのワイシャツを着て、
学校に来ても良かったし、
革靴を履いて来ても良かった。
女子は、
短髪にしろ! とか、
長い場合は、三つ編みにしろ! とか、
言われ無かった。
何で?
突然、こんなに変わったんだ?
何故?
自由が奪われたんだ?」
昔の中学は自由だった。
主にファッション面で。
私の妻が「全然違う!」と驚いたのも、
服装や髪型、
つまり、
校則に関してだった。
だから、
この話を妻にした。
妻が高校を卒業するまでは、
日本は、
世界一豊かだった。
世界一発展していた。
新しい物が、どんどん生まれ、
流行が、クルクル変わる。
常に、
良くなって行った。
そんな学生時代を過ごした妻にとって、
十四年前と言えば、
遅れていて貧乏で、暗くてダサい。
戦前の様なものだ。
実際、
私が中学の時は、
親も教師も全員、
戦前の教育を受けていたから、
感覚は戦前みたいなものだった。
だから、
海軍式ビンタを何発も喰らっても、
『えこひいき』認定される。
そんな暗黒時代の中学生が、
日本が世界一豊かだった時代よりも、
華やか学生生活を送っていたなんて。