漫才「禁煙」
漫才29作目です。どうぞよろしくお願いいたします。
禁煙男の自宅。
禁煙男「いらっしゃい」
友 人「おじゃまします。なんだい? 聞かせたい話があるって言ってたけど」
禁煙男「禁煙を始めたって、以前君に宣言しておいただろ?」
友 人「ああ、確かそんなこと言ってたなあ。続いているのかい?」
禁煙男「もちろんさ。そうしたらさあ、あれからいろんなことが身の回りで起こり始めてさ」
友 人「ふーん、たとえば?」
禁煙男「まずは消防署の人がやってきてね、お礼を言われちゃったよ。まいったまいった」
友 人「禁煙したことでか?」
禁煙男「うん。火災予防運動に尽力したっていうことらしい」
友 人「そういえばさあ、お前んちにくると、いつも火の用心の声が聞こえてきていたはずだけど?」
禁煙男「今は聞こえてこないだろ?」
友 人「うん、静かになったものだねえ」
禁煙男「ほんと、どこいっちゃったんだろう」
友 人「ひょっとすると、あれは消防署の人たちがやってくれていたのかもしれないな」
禁煙男「なるほどね、そういうことだったのか。ずいぶんと心配をかけていたんだなあ」
友 人「禁煙してくれて、ほっとしたっていうことなんだろうか」
禁煙男「これ、見てくれよ」
額縁を出す。
友 人「表彰状、すごいじゃないか」
禁煙男「環境省から表彰されたんだよ」
友 人「環境省が? なんでまた」
禁煙男「僕の禁煙のおかげで空気が綺麗になったんだと」
友 人「お前、いったい何本吸っていたんだよ」
禁煙男「官邸にも呼ばれてさ」
友 人「総理大臣官邸のことかい?」
禁煙男「そうなんだよ。よくぞ煙草をやめてくださいましたって、総理から感謝の言葉を掛けられたよ」
友 人「名誉なことじゃないの」
禁煙男「握手と記念写真まで求められちゃって」
友 人「へー」
禁煙男「次の選挙のリストにあなたの名前を載せてもいいですか? だってさ」
友 人「すごいね」
禁煙男「いずれは厚生労働大臣を頼みたいなんて、耳元でささやかれちゃった」
友 人「そこまでされたら、もう二度と吸えないな」
禁煙男「国連にも情報が入ったらしくて、ぜひとも演説してくれって言ってきているんだ」
友 人「国外にも知れ渡っているのかよ、すごいなあ」
禁煙男「実を言うと、映画化の話も出ていてさ」
友 人「うっそお」
禁煙男「なんとハリウッドだぜ」
友 人「演説に映画化。ずいぶんと忙しくなるなあ」
禁煙男「ああ、打ち合わせでアメリカとこっちを行ったり来たりさ、大変だよ」
友 人「それはお疲れ様。まあ、息抜きに一服するといい。ほれ、一本」
禁煙男「ありがとう」
読んでくださり、ありがとうございました。