穴空きカレーの夜。
タグが食べ物だけなんだよ!(嬉)
嫁と喧嘩をした。
夕飯は無言でおでんを食べた。
昨日の残りのおでんに練り物を追加したものだった。
朝、嫁は起きてこなかった。
……まだ怒っているのだろうか。
「ただいま~」
「……」
無言で迎えられた。
まだ怒っている。
だが夕飯は用意してあった。
きりたんぽ鍋だった。
朝、やっぱり嫁は起きてこなかった。
……まだ怒っているのだろうか。
「ただいま~」
家に帰ると嫁はいなかった。
食卓にはカレーが置いてあった。
カレーの具が……何故かちくわ。
そして、米の代わりにきりたんぽ。
これは……
『私の心にも穴が開いた』とでも言いたいのだろうか……
俺は走った。
嫁の実家へと。
嫁の実家は市内にある。
歩いて15分位。
走ったので10分で着いた。
「こ……こんばんは……」
「あら~お疲れ様~。 どうしたの? 今日出張だから泊まるって聞いてたけど」
「……はい?」
……それは来週だ。
「あれ? なんでいるの?」
不思議面して嫁が出てきた。
「出張……来週なんだけど」
「えっ、ごめ~ん」
嫁はもう怒ってなどいなかった。
帰りの道すがら、嫁に例のカレーのことを聞いてみた。
「ああ、あれ? きりたんぽ鍋とちくわが中途半端に余ったから、鍋の残りにカレーぶっこんでちくわ入れて、ご飯のかわりにきりたんぽにしてみたんだけど」
どうせ食べるの自分だからいいや、と思ったらしい。
しかし、たまたま実家に用事があったので、そのまま泊まる事にしたという。
カレーの事など忘れて。
「なんであんなに焦ってたの? まだ怒ってると思った?」
「……そうじゃないけど」
深読みし過ぎた事は黙っておいた。
嫁は「私もプリンを勝手に食った位でそこまで怒んないよ! どんだけ心が狭いんだよ、あんたの中で」と言いながらまたプンスカしていた。
……滅茶苦茶狭いじゃないか、心。
そして帰り際、ちょっといいプリンを買わされた。
俺が食ったのは特売の3連プリンなのに。
家に帰った嫁は、ニコニコしながらプリンを食っていた。
俺は不条理を感じながら謎の穴空きカレーを食った。
……案外旨かった。