32.細野の戦い(5)
援軍であるはずの元阿弥が細野城を攻撃し始めた。
細野城兵たちは依然として混乱している状態であった。
その少し前に、志太軍の本陣では単騎で乗り込んで来た若者が祐藤に対して口を開いていた。
若者
「申し遅れました。拙者、徳葉城城主 平塚元阿弥が家臣、宮本宗重と申します。」
・宮本宗重
村上家家臣。
幼少期を竹呉島で過ごした後に放浪の旅に出る。
流れ着いた村上島で徳葉城の元阿弥の目にかかり家臣として採用される。
体格は小柄で身軽な為、忍者として活躍したという。
祐藤
「ほう、そなたは村上家の家臣であったか。して、わざわざ敵陣に乗り込んでまで我らに伝えたいことは何であるか。」
そう祐藤が言うと宗重は答えた。
宗重
「徳葉城を志太家の傘下に加えて頂きたく祐藤殿の元へと参りました。これは、徳葉城城主の平塚元阿弥及び家臣団の意向にございます。」
平塚元阿弥ら徳葉城の家臣は、主君を村上家から志太家に鞍替えをしたいという意向である。
長馬の死後に村上家の家督を長継が相続したことにより、様々な不満が積もりに積もっていたようである。
長継は父である長馬のような優れた才能を持たない凡将であったと言われており、内政面や軍事面においての功績が全く存在しなかったようである。
そんな中、志太家が村上家を攻めるという情報が入り、今回の行動に至ったという。
祐藤
「なるほど良く分かったわい。しかし、お主ら徳葉城の軍勢が我が軍に味方するという証拠を見せてもらえねばそう簡単にこの話を信じる訳には行かぬ。」
この戦国の世では、様々な方法で相手を欺き陥れるなど疑心暗鬼と隣合わせになることが日常である。
そうやすやすと人を信じることも難しいが故に祐藤は宗重を警戒していた。
宗重
「では、間もなく徳葉城の兵が現れて細野城を攻撃致します。よく見ていて下され。」
そう宗重が祐藤に言って数分後、細野城を目指して進軍する大軍が祐藤の目に飛び込んできた。
徳葉城の軍勢である。
やがて軍勢は細野城を取り囲み、鉄砲による砲撃が始まった。
宗重
「祐藤殿、これで信じて頂けましたでしょうかな。」
宗重は真剣な眼差しで祐藤を見つめてそう言った。





