26.嵐の中
村上家との戦の準備が整い、志太軍は全軍船に搭乗して細野城を目指し始めた。
祐藤
「皆の者、海の上では天候が変わりやすい故に細心の注意を払って進むのじゃ。」
確かに今回の進軍航路は長距離の海を船で渡る為、危険は付きものである。
特にこの時代は突然の嵐によって船が難破し、軍が壊滅的な打撃を受けることも珍しくなかった。
志太軍が村上島を目指して船を進めて数刻が経った。
どうやら祐藤の予感は的中し、辺りの海面が荒れはじめようとしていた。
祐藤
「皆の者、慌てるでない。こんなこともあろうかと信常殿に発明を頼んでおったのじゃ。」
そう祐藤が言うと船の中央に取り付けられていた操作棒のような物を回し始めた。
同時に船からは無数の柵が現れ、やがてその柵は船を包み込んで球体のような形に姿を変えた。
信常
「嵐のような悪天候から船を守る為に拙者が発明致した。それがこの海難知らずである。」
・海難知らず(かいなんしらず)
信常が発明した船に取り付ける装置。
普段は収納しておくことが可能であり、嵐などに遭った際に操作棒を回すことで船全体を強度の高い柵で包み込む。
この柵によって兵が船から海上へ投げ出される事故を防ぐ。
また、船の安定性も向上するように設計もされており、転覆を防ぐ効果もある。
志太軍の船はこの海難知らずを使うことにより、海上での事故によって命を落とす兵たちは非常に少なかったと言われている。
また、志太家が村上島に目をつける数年前から信常に海難知らずの発明着手を命じていたとされており、祐藤の先見性は高かったようである。





