09.祐信の乱(4)
祐藤は先刻に見つけた抜穴に城内の兵たちを集めた。
祐藤
「この抜穴の先に祐信と政景がおるはずじゃ。半分の兵は城内の抜穴を、もう半分の兵は城外の抜穴に回り込みして奴らを挟み撃ちにしてくれようぞ。」
祐藤は兵たちに指示を出し、作戦を開始した。
やがて城内の兵たちは抜穴の途中で祐信らの兵に出くわした。
想定外の迎撃に祐信らの兵は非常に混乱した様子であった。
祐信
「こら、慌てるでない。この抜穴さえ抜ければ祐藤の首が取れるのじゃ。怯むな、早く行くのじゃ。」
祐信は兵たちに向かって叫んだが混乱している状況下では誰一人その言葉に耳を傾ける者はいなかった。
ただ祐信の悲痛な叫びが抜穴の中でこだまするだけであった。
さらにこの抜穴という狭い戦場下で混乱した兵たちは死を恐れ、逃亡する者や投降する者が相次いだ。
祐信
「むむ、これでは兵は使いものにならぬな。かくなるうえは退却するしか無さそうじゃな。」
そう言うと政景が慌てた表情で言った。
政景
「祐信様、城外の抜穴も城の兵に囲まれております。これでは退却もままなりませぬ。我らは袋の鼠ですぞ。」
二人はみるみるうちに絶望に満ちた表情へと変わった。
背水の陣の覚悟で必死の抵抗を繰り返したが囲まれた兵たちの前では焼け石に水で長くは続かなかった。
祐信らの兵たちは次々とやられていき、辺りは阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。
そんな光景を目の当たりにした政景はやがて諦めた表情へと変わり、祐信に言った。
政景
「祐信様、最早これまででございます。ここは潔く腹を切りましょう。残った兵たちは祐藤にかけあって助命を懇願しましょう。」
祐信
「嫌じゃ。死ぬのは嫌じゃ。死ぬのはお前たちだけで良いわ。儂は絶対に生きて逃げ帰ってやるぞ。」
政景は祐信のその言葉を聞いて呆れ返った。
同時に、今までこのような者の下で働いていた自分自身に吐き気すら感じていた。
政景は残った兵たちを前に跪いた。
政景
「皆をかような者の為の謀反に利用させてすまぬ。この過ちは祐信殿と拙者政景の命を持って償いたいと思うておる。我らの首を持って祐藤殿に届けよ。」
そう言うと政景は祐信に向かって刀を素早く一太刀下ろした。
祐信
「貴様、裏切ったな。よくも…よくも…」
祐信は政景に斬られて息絶えた。
政景
「拙者はこれより数々の不忠についてあの世の祐村様に詫びを入れに参る。」
そう言うと政景は横たわる祐信の亡骸のもとで自害して果てた。
やがて祐信と政景の首が兵たちにより祐藤の元に届けられたことで事態は収束した。
謀反は首謀者である祐信と政景の死亡により正規軍側の勝利に終わったのである。





