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架空戦国伝  作者: 佐村孫千(サムラ マゴセン)
第10章 異国の大決戦編
536/550

39.ワニアの戦い(31)

アテヌによる催眠術にかかった事により政武は、彼の命令に忠実に従う部下となってしまう。

敵軍である連合軍の将たちを一人残らず討ち取るべし。

その命令を遂行すべく彼は闘志を剥き出しにしていた。


やがて祐永が皆に対して口を開き始める。


祐永

「皆の者に申す。政武殿を決して殺めてはならぬ。良いな?」


政武は今、アテヌの催眠術によって我らの命を狙う敵と化した。

それ故に彼と刀を交えざるを得ないであろう。

だが、それでも討ち取る事はしてはならぬと祐永は言っていた。


長継

「し、しかし祐永殿。そうは申されましても…」


長継は戸惑いながらそう言葉を返していた。

すると祐永が真剣な表情をして言う。


祐永

「政武殿は今や我ら幕府の人間であり、良き友である。そのような者を我らが殺めるなど、以ての外にござらぬか?のう、宗重殿よ。」


宗重

「祐永様…」


祐永の言葉を聞いた宗重は、目にうっすらと涙を浮かべていた。

その様子を見た政武が苛立った様子で声を上げる。


政武

「おらっ!何をごちゃごちゃと言っておる!」


政武はなおも興奮した様子で宗重に襲いかかる。

宗重は素早く刀を抜き、彼の攻撃を受け止めていた。


宗重

「おい政武、止めよ!止めるのじゃ!儂はお前とは戦いとうない…」


ワニア島への航海から始まり上陸、そしてヘルト城への潜入…

どうやら宗重は政武と行動を共にしてきた中で、友情が芽生えているようであった。

そのような友と刀を交えるなど自身には出来るわけが無いであろう。

宗重は悲痛な叫び声を上げていた。


そうしてしばらく二人の鍔迫り合いが続いた後に崇房が声を上げ始める。


崇房

「政武殿よ!お主はかような男では無いはずであろう?亡き政豊殿も草葉の陰で泣かれておるぞ!」


今の政武の状況を父である政豊が見たとするならば、必ずや悲しみの声を上げるであろう。

同士討ちを行おうとしている彼に対して崇房は、戒めるようにそう言っていた。


それを聞いた政武が怪訝そうな顔を見せながら答える。


政武

「あん?何だって?いちいちうるせえ男じゃな。貴様から先に地獄に葬り去ってやろうか?」


崇房

「望むところでござる。鬼の口羽の異名を継ぎしこの崇房、お主の相手になってやろうぞ!」


そう言うと崇房は刀を抜き、政武に対して構えの大勢を見せていた。


政武

「ほう、鬼ねぇ。地獄に逝くにはぴったりの異名じゃねえか。ふはははは!」


すると次の瞬間、政武は笑い声を上げながら崇房に対して襲いかかる。

互いの刀が激しくぶつかり合い、凄まじい音が鳴り響いていた。

こうして崇房と政武による一騎打ちが始まる事となった。


始めのほうは共に互角の戦いを繰り広げていたようである。

だが、次第に政武による猛攻を立て続けに受けた事によって崇房は劣勢の状態に陥りつつあった。


崇房

「くっ…なんという力じゃ…」


そう口にする崇房の表情には疲れの様子が見え始めていた。


政武

「ほれほれ、さっきまでの威勢はどうした?その鬼の異名はただの飾りかね?ん?」


自身を鬼の口羽と名乗ってはいたが、蓋を開けてみればどうだ。

単なる大言壮語に過ぎぬではないか。

政武は崇房に対して吐き捨てるようにそう言っていた。


すると祐永が政武に向かって怒鳴り声を上げる。


祐永

「政武!いい加減にせぬか!このたわけ者が!」


祐永によるその非常に通った声が辺りに響き渡った事で政武は一瞬、怯んだ様子を見せ始める。


政武

「な、何じゃ?貴様は?」


祐永

「お主は誇り高き海賊衆の頭であろう。さすれば、礼儀というものをわきまえられよ!」


お前は海賊を束ねし頭領では無かったのか。

礼儀を欠く行為を起こす者にはもはや人の上に立つ資格は無いであろう。

祐永は政武に対して痛烈な言葉を浴びせていた。


政武

「ふふん、礼儀…か。あんたなかなかいいこと言うじゃねえか!はっはっはっはっはっ!」


政武は声高らかに笑っていた。

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