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11.臣従交渉
長馬は、自分自身で長包の魂胆を見抜く為に自ら桐丘島の大月家を訪ねた。
初代領主の時代から一切の交渉を行わない立場を貫いていた村上家が他家に干渉しようとしている。
周辺大名たちの間では、この訪問の事実を聞いて大変驚いた。
長馬は桐丘島に到着すると家臣に案内され、長包と対面した。
大月長包
大月家当主。
かつて桐丘島が無人島であった時代に本土より移住を行った大月氏が土着し、戦国大名化したものである。
大月氏は、第7代三浦幕府将軍である三浦祐虎の落とし胤の家系であったとされるが定かではない。
長馬
「率直に申す。長包殿よ、我が軍門に降られ臣従を誓われよ。さすれば桐丘島の安泰を約束しようぞ。」
長包は一瞬躊躇した表情を見せたが、すぐに表情を戻した。
長包
「従属ではなく、臣従でございますか。当家は三浦将軍家を血筋とする家系ゆえにそこまで落ちぶれることはできませぬ。」
長馬
「ほう、それでは当家に従うことはできぬと言うことですな。しかしこの乱世の世、滅亡の途を辿れば名家も途絶えてしまうということを肝に命じておくことですな。」
臣従交渉は、決裂したのであった。





